2013 Fiscal Year Research-status Report
海外日本人留学生の心理的健康とアイデンティティの関連
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24730598
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Research Institution | Japan Lutheran College |
Principal Investigator |
植松 晃子 ルーテル学院大学, 総合人間学部, 准教授 (90614694)
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Keywords | 民族アイデンティティ / 自我アイデンティティ / 異文化適応感 / 異文化接触 / 日本人留学生 / 帰国子女 |
Research Abstract |
平成24年度の結果から、より詳細に民族アイデンティティと自我アイデンティティの力動的関係を明らかにする必要性が明らかになった。平成25年度は、①前年度の追試調査として、5名に調査を実施した。また②留学生との比較対象として、現在国内の大学に通う帰国子女に調査を実施した。さらに③縦断調査も引き続き実施中である。主な結果を報告する。 結果①:アンケート調査とインタビュー調査を実施した。留学先の大学院に今も在籍する者が1名、卒業後に現地にて就職している者が2名、日本に帰国したものが2名であった。留学後現地に就職した者のうち、大学に留学前から海外生活をしていた1名は「日本人でもなく、アメリカ人でもない」という所属感の不安定さが明らかであった。民族アイデンティティと自我アイデンティティの関係とその変化プロセスを検討する際に、大学までは日本で生活し留学する者だけでなく、その前から海外生活をしていた「帰国子女」の群を検討することが必要であると考えた。結果②国内大学生のうち、海外滞在経験が5年以上の帰国子女12名の女子にアンケート調査とインタビュー調査を実施した。先行研究の国内学生及び留学生と比較した。民族アイデンティティ(愛着・探索):帰国子女は国内学生よりも高く留学生と同程度の得点であった。自我アイデンティティ:帰国子女は留学生よりは低く、国内学生よりは高い値であった。適応感:「学生生活」は留学生より低く、国内学生と同程度だが、「心身の健康」では留学生や国内学生よりも低い値であった。インタビューでは帰国ショックを語り、日本人なのに日本人ではないような自己観を持ちやすい特徴が見えた。留学生群や海外経験のない国内学生と比較することで自我アイデンティティと民族アイデンティティ、さらに適応感との関連が明らかになるのではないかと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度、質問紙調査及び縦断調査を依頼していた組織では、止むを得ない事情で調査が中止された。その後、アメリカのJapanese Student associationなどホームページから個人的に調査を依頼し、調査を実施していた。平成24年度の結果から、より詳細な要因間の関係を明らかにする必要性が示されたため、帰国子女群への調査など研究計画よりも質的な調査を取り入れ、データを丁寧に見ている。できるだけ調査協力者を増やせるように誠意努力していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査計画の遅れが目立つが、平成26年度は調査協力者を得られる目途が立ち、約30名ほどの対象者に対し、1年間の縦断調査(アンケート調査とインタビュー調査)を実施できる見込みがある。海外滞在者のメンタルヘルスは、本研究における最大の目的であるため、異文化適応感を支える要因としての民族アイデンティティ・自我アイデンティティの関連プロセスを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査フィールドとして依頼をしていた団体で、止むを得ない事情で調査が実施できなかったため、初めに予定していた規模の大きな調査が実施できなくなったため。 本研究のような異文化における心理的インパクトについての研究は、質的な調査や縦断調査が少ない。インタビュー調査の積み重ねや、国内学生と留学生だけでなく、帰国子女群への調査を実施することにより、質的にも説得力のある調査を行っていきたい。 また、平成26年度は、30名ほどになるが、インタビュー調査を含む縦断調査が実施できる可能性がある。現在、調査内容や頻度などの調査計画を検討している。
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