2012 Fiscal Year Research-status Report
強迫性障害に対する認知・行動療法の治療効果研究:RCTと分子遺伝学的手法を用いて
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24730606
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
正木 大貴 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (00457970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 強迫性障害 / 認知行動療法 / RCT / 遺伝学的手法 |
Research Abstract |
強迫性障害の治療には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を中心とした薬物療法が行われることが一般的であるが、臨床的には適切な薬物療法を行っても強迫症状が残存することがある。そこで曝露反応妨害法のような行動療法やストレスマネージメントを利用した認知療法などを併用することも多いが、それでもなお反応の良くない場合もある。今回の研究の最大の目的は、SRIによる適切な薬物療法を経てもなお、中等度~重症のOCD症状が残存する患者に対する併用療法としてERPとCBTのRCTによる治療効果研究を行うことであった。 まず、研究の実質的な機関である京都府立医科大学附属病院精神神経科外来を受診した者で、研究への参加の同意が得られたDSM-IV-TRの診断基準を満たすOCD患者を対象としており、現時点で18名がリクルートされている。年齢層は19歳から45歳までで、うち12名が最初の12週間のSRI治療を受けている段階である。また4名が次のERPもしくはCBTの面接をおこなっている段階である。残り2名は治療前のアセスメント中である。 年齢・性別についてマッチングさせ、(a)ERP群:ERP+SRI、(b)CBT群:CBT+SRIの2群に無作為割り付けをし、心理療法前後の臨床評価を比較する予定であるが、心理療法については、いずれもマニュアルを作成して内容を統制して行っている。 ERP群では曝露反応妨害法はガイドブックを使用し構造化した治療手続きで行った。またCBT群では不安に対するストレスマネージメント(呼吸法や筋弛緩、問題解決法など)を意図としたCBT的アプローチによるマニュアルを作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該研究機関である大学の研究協力者の異動が複数あり、研究体制を再調整するのに時間がかかり、計画開始時期が遅くなった。 また少なくとも12週間のSRI治療を受けた後に、Y-BOCS得点が16点以上である者をその後のRCTの対象者とすることとしたが、SRI治療により比較的大きな改善が認められる場合も多く、12週間の治療後になおもY-BOCS得点が16点以上で中等度以上の症状の残存がある対象者が想定していたよりも少ないことがあげられる。くわえて改善が見られず中等度以上の症状が残る患者のなかにも、12週間のSRI治療中に治療を自己中断する場合もあり、研究対象者確保がやや停滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
OCDの治療において、SRIによる薬物療法の併用として行うERPとストレスマネージメントを目標としたCBTの間で、RCTを用いた治療効果研究を行う。対象者は、当初少なくとも12週のSRIによる薬物治療を受けたのちに、Y-BOCSの得点が16点以上である成人のOCD患者としていたが、場合によってはY-BOCS得点の基準を変更することも考えている。基準を変更しても本来の目的は何ら失われるものではない。またSRIによる治療を継続しながら、週に1回のERPもしくはCBTの面接を15回にわたって受け、心理療法前後を含め、計5回の臨床評価を継時的に行うこととする。 またY-BOCSによる症状評価以外に、発症年齢、QOL、罹病期間、併存疾患などの調査を行うとともに、OCD患者から末梢血を採取し、ゲノムDNAを抽出する。5-HTTの遺伝子多型をS型、LA型、LG型の3群に分類し、これらの指標とOCD治療に影響を与える治療予測因子についての関連性を精査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
OCD患者を対象として、SRIによる薬物療法にくわえてERPを併用した群とCBTを併用した群の間でRCTを行い治療効果について、引き続き明らかにしていく。その後の段階として、OCDの治療結果・治療方法に影響を与える因子となる遺伝子多型が存在するのかということを明らかにするために、OCD患者から末梢血を採取し、血液ゲノムDNA精製キットを用いた遺伝学的手法を取り入れる。セロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター領域(5-HTTLPR)のS allele、LA allele、LG alleleを同定するために、これらの領域を含む2種類のオリゴヌクレオトチドプライマーを設計し、それらを用いてPCR法(polymerase chain reaction)にて上記多型を含む領域を増幅する。PCR反応産物を精製し、上で用いたものと同配列のプライマーを使用し、自動シーケンサーを用いて塩基配列の同定を行う。5-HTTの遺伝子多型をS型、LA型、LG型の3群に分類し、これらに他の臨床的指標(性差、発症年齢、QOL、罹病期間、併存疾患など)をくわえて、OCD治療に影響を与える予測因子についての関連を調査する。上記の遺伝学的実験の際の消耗品費として、器具および試験試薬の購入のために250万円程度を見込んでいる。 また、関連する国内外の専門学会への参加および発表のための交通費・参加費・旅費、論文作成のための英文校閲費用として50万円を計上している。研究の補助には専門的な技術と知識が求められるため、30万円を計上している。
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