2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 由己 名古屋大学, 発達心理精神科学教育研究センター, 特任研究員 (50551777)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 健康心理学 / 社会系心理学 / 健康リスク |
Research Abstract |
喫煙、飲酒、肥満などの健康リスクテイキング行動を防止・抑制することは、健康長寿社会の構築に資する重要な課題である。本研究は、健康リスクテイキング行動のメカニズムを解明するために、刺激希求、自己制御能力、社会規範が健康リスクテイキング行動に与える影響ならびにそれらのの相互関係の解明をめざしている。 平成24年度は、刺激希求、健康リスクテイキング行動に対する仲間や家族などの集団規範、自己制御能力が青年の飲酒に与える影響を解明するための調査を行った。刺激希求は青年用刺激希求尺度(柴田, 2008)を、自己制御能力は自記式質問紙により、金銭課題を用いた時間割引率を算出した。親や家族などの集団規範と本人の飲酒行動については主観的な測度を用いた。その結果、刺激希求、仲間の飲酒規範、親の飲酒規範はそれぞれ青年の飲酒行動に直接的な影響を与えることが認められた。また、刺激希求は、仲間の飲酒規範を媒介して間接的にも青年の飲酒行動に影響を与えていることが明らかになった。この結果は、青年期の飲酒行動について、刺激希求をはじめとするパーソナリティ特性が中核的な役割を果たしており、飲酒行動の背景に刺激希求に基づく友人選択過程が影響を与えている可能性を示唆するものである。 さらに、平成24年度は、種々の政府統計資料に基づき、青年期の飲酒・喫煙行動の特徴を書籍としてまとめた。書籍刊行により、我が国における青年期の健康リスクの理解、ならびに、健康リスクテイキング行動を解明する重要性を広く啓発することに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的では、自己制御能力の測度の信頼性と妥当性を明らかにすることに主眼を置いていた。自己制御能力の諸測度について信頼性と妥当性を検討したところ、いくつかの尺度については十分な信頼性が認められないことが明らかになった。そのため、今年度は、自己制御能力の諸測度間の関連性の検討は行わなかった。しかしながら、Duckworth & Kern(2011)のメタ分析、ならびに、先行研究でもっともよく使用されている自己制御能力の測度のひとつである時間割引率について、飲酒や喫煙などの健康リスクテイキング行動、パーソナリティ尺度との関連を検討し、妥当性を検討することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、幅広い年代を対象に、健康リスクテイキング行動に伴う健康リスクの認知について質的な調査を行うことに加え、自己制御能力、刺激希求、社会規範の相互関係をとらえた健康リスクテイキング行動のメカニズムの解明を試みる。具体的には、年齢や性別などの基本属性、健康リスクテイキング行動の種類によるメカニズムの差異について明らかにすることを試みる。 健康リスクテイキング行動のメカニズムについては、相関分析により探索的な検討を行う。同時に、先行研究から示された因果関係について、潜在変数間の関連性をとらえる手法である構造方程式モデリングを用いて検討する。構造方程式モデリングの実施には、統計分析ソフトであるAmosを用いる。健康リスクテイキング行動の種類、性別や年齢などの基本属性によるメカニズムの差異については、多母集団同時分析を行い、潜在変数と観測変数の関係性について厳密に制約を課した群間比較を行う。健康リスクテイキング行動に伴うリスク認知について得られた自由記述データは、テキストデータとして処理し、テキストマイニングソフト(SPSS Text Analysis for Survey)を用いた客観的な分類を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた状況:調査実施時期が遅れたため、データ入力等を行う協力者の作業が平成25年度となった。そのため、謝金相当額の研究費を次年度にもちこすこととなった。このデータは、健康リスクテイキング行動と刺激希求の関連性を検討したものであるため、次年度の研究の一部として、引き続き遂行する予定である。
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