2012 Fiscal Year Research-status Report
大学生のうつ病に対する集団認知行動療法プログラムの開発と普及に関する研究
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24730608
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
佐藤 寛 関西大学, 社会学部, 准教授 (50581170)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | うつ病 / 集団認知行動療法 / 大学生 |
Research Abstract |
うつ病は大学生にとって重大な精神健康上の問題である。本研究では,大学生のうつ病に対する集団認知行動療法プログラムを開発し,介入研究によってその有効性を検証することを目的とした。 平成24年度は,大学生のうつ病に対する集団認知行動療法プログラムを開発し,その有効性を検討した。対象者のスクリーニングには,抑うつ症状を測定する質問紙 (CES-D, Radloff, 1977)と,うつ病の診断を目的とした構造化面接 (精神疾患簡易構造化面接, MINI, 大坪ら, 2003)を使用した。抑うつを測定する質問紙の基準値以上の得点を示すものの,うつ病の診断には至らない準臨床水準の抑うつ対象者42名を,集団認知行動療法を実施する介入群と統制群に割り付けるランダム化比較試験(RCT)を実施した。なお,面接実施時点でうつ病の診断に該当していた4名についてはRCTの対象とはしなかったが,同様の集団認知行動療法を実施した。集団認知行動療法は90分×5セッションから構成され,ファシリテーターはトレーニングを積んだ臨床心理士が担当した。 介入前と介入後の2時点でアセスメントを実施した。主要な効果指標は,うつ病の診断面接(MINI),抑うつ症状の尺度(CES-D),自殺念慮の尺度(SIQ)であった。介入群の対象者は介入前から介入後にかけて有意に抑うつ症状と自殺念慮が低減していることが示され,統制群の対象者よりも大きくこれらの指標が改善していた。介入群と統制群のいずれにおいても,介入実施後にうつ病の診断を新たに示す対象者は認められなかった。また,うつ病の診断基準を介入前に満たしていた4名についても,介入前から介入後にかけて抑うつ症状が低減する傾向が認められ,そのうち3名はうつ病の診断に該当していなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団認知行動療法プログラムはほぼ完成し,その有効性を検討する段階に入っている。フォローアップデータの収集も一部終えている。抑うつ傾向の高い対象者への介入研究はランダム化比較試験を実施するのに十分なデータがそろっているが,うつ病の基準を満たす対象者への介入研究のデータは現段階でまだ不足している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に作成した集団認知行動療法プログラムを実施するファシリテーター養成を目的としたトレーニングコースを開発する。トレーニングコースのパイロット版はすでに作成済みであるが,細かい内容を修正した上でファシリテーター候補となる心理士の募集を行い,効果研究に参加する対象者の募集も改めて行う必要がある。 大学生のうつ病に対する集団認知行動療法の経験のない臨床心理士4名に対して,作成されたプログラムに基づくトレーニングコースを受講してもらう。コースはアセスメントに関する研修(2時間),プログラムの概要に関する研修(2時間),倫理的配慮に関する研修(2時間),模擬セッションによる実践研修(10時間)の計16時間で構成される。 今年度と同様のスクリーニングによって対象者を40名程度選出し,①トレーニングコースを修了したファシリテーターによる集団認知行動療法プログラムを実施する条件(治療群),②ウエイティングリスト条件(無治療群),の2群にランダムに割りつける。 セッション前,セッション後の2時点で前年度と同様のアセスメントを実施し,介入効果の検討を行う。無治療群に対する治療群の効果サイズを算出し,前年度に実施されたプログラムと同等の効果が得られているかという点について検討する。加えて,治療マニュアルをもとにしたチェックリストを作成し,セッションを録画した映像と照合しながら各ファシリテーターがマニュアルをどの程度遵守しているか集計する。このデータを分析することで,マニュアルのどの要素を遵守することが治療成績の向上に結びつくのか明らかにすることが可能になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,研究を遂行するための最低限の設備備品および消耗品を購入する。特に,アセスメントのための心理検査や,プログラムで使用する皮膚温度計が必要となる。また,普及可能性の検討のため心理士4名を実験補助者として雇用する費用,米国の研究者を訪問してトレーニングコースのスーパーバイズを受けるための旅費,論文や学会発表に際しての英文校閲に対する謝金,研究成果の発信や対象者募集のためのホームページ作成維持に関する費用が必要となる。なお,前年度に予定していた国際学会への出張が,発表時期の関係で国内学会への出張に振り替えられたため,265,116円の繰越金が生じている。今年度はこの繰越金を充当して国際学会での発表を1件追加する予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Psychopathological symptoms in two generations of the same family: A cross-cultural comparison2013
Author(s)
Essau, C. A., Ishikawa, S. Sasagawa, S., Otsui, K., Sato, H., Okajima, I., Georgiou, G. A., O’Callaghan, J., & Bray, D.
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Journal Title
Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology
Volume: 48
Pages: 2017-2026
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Randomized pilot trial of an indicated depression prevention program for Japanese college students
Author(s)
Sato, H., Takaoka, S., Inoue, M., Mitamura, T., & Noguchi-Sato, M.
Organizer
Society for Prevention Research 21st Annual Meeting
Place of Presentation
San Francisco, USA
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[Presentation] Universal prevention for depression in school: Implication for anti-stigma action in education
Author(s)
Ishikawa, S., Sato, H., Togasaki, Y., Sato, Y., & Sato, S.
Organizer
International Meeting of WPA Anti-stigma section
Place of Presentation
Sabo Kaikan, Tokyo
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