2012 Fiscal Year Research-status Report
汚染恐怖に対するイメージ曝露療法発展にむけた認知神経学的メカニズムの解明
Project/Area Number |
24730611
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
岩佐 和典 就実大学, 教育学部, 講師 (00610031)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強迫性障害 / 汚染恐怖 / 触覚イメージ / 嫌悪感 / 脳画像 |
Research Abstract |
H24年度は仮説の精緻化,質問紙の作成,調査の実施,実験課題の検討を行った。 まず詳細な文献レビューを行った後,嫌悪感の測定尺度であるDisgust Propensity and Sensitivity Scale(DPSS-R)を日本語に標準化する作業を行った。具体的には,英語ネイティヴの協力を得て,測定尺度項目の翻訳とバックトランスレーションを行った。そうして作成されたDPSS-R日本語版の因子構造,信頼性,内的整合性,妥当性を検討するために質問紙調査を行った。これに並行して,仮説モデルを検証・精緻化するための質問紙調査も同時に行った。全国の大学等に依頼して,計1102部の質問票を配布し,郵送で161部を回収した。回収率は約14.6%だった。それらのデータを用いて,DPSS-Rの因子構造と内的整合性を検証した。その結果,原尺度と同等の因子構造(嫌悪感受性と嫌悪傾向の2因子構造)が認められ,高い内的整合性が確認された。現在のところ,日本語で利用できる嫌悪感の測定尺度は見当たらず,海外で劇的に進展している嫌悪感研究に追随することすら叶っていない。本成果は,その測定方法標準化の第一歩としての意義を有している。今後はさらにデータ数を増やして結果の精度を高めていくと同時に,十分なデータ数を用いて信頼性と妥当性をさらに検討し,本研究の仮説モデルを統計的に検証していく必要がある。 さらに,実験課題について検討するために,先行研究の実験手法をレビューすると共に,fMRI実験の専門家と共に実験デザインを構成した。また,それに並行して,実験刺激を選定するための調査を行った。その結果,実験刺激が得られると共に,本研究の仮説に関係する知見が派生的に得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DPSS-R日本語版標準化のための準備,ならびに質問紙調査の実施を,予定通りに進めることができた。具体的には,全国の大学の授業や,臨床心理学関係の講演会等で,1000部以上の質問紙を配布した。しかしながら,倫理委員会の決定により,配布後に郵送で回収するという方法を取ることとなったため,回収率が思ったように高まらず,当初計画していたほどのデータ数は集まっていない。したがって,因子分析や内的整合性に関する分析は行えたものの,データ数の少なさから,十分に安定した結果が得られたとは言いがたい。再検査信頼性や構成概念妥当性についても,さらにデータ数を増やして検討していく必要がある。また,モデル検証に関しても十分なデータ数が得られておらず,引き続き調査を実施していく必要がある。 一方で,H25以降に予定していた実験課題の精緻化については,想定していた以上の進展があった。実験刺激の選定,ならびに課題構成を,fMRI実験の専門家からの協力を得ながら実行することができた。したがって,H25からは速やかに予備実験へ移ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に,質問紙調査をさらに進めることで,必要なデータ数を確保していく。すでに全国の大学等に対して協力を要請しており,準備が整い次第,速やかに計画を実行できる。H25年度中にある程度のデータ数を確保し,質問紙研究の結果を確定させていく。現在のところ,郵送による回収率が15%程度のため,当初予定していたサンプル数には達しないかもしれないが,可能な限り多くのデータを収集していく。 第二に,H24に構成した実験課題について,予備実験を行い,課題をさらに精緻化していく。そのうえで,実験課題のデザインを確定させ,本実験の実施に移る。そのため,H25後半からは実験参加者の募集を開始する。 第三に,すでに得られている研究結果を発表するために,日本人工知能学会,アジア認知行動療法学会,日本心理学会,それぞれの年次大会に参加し,研究発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度中に,実験課題に関する進展があり,そのための出張を頻繁に行う必要があった。その影響から,300千円分を前倒し請求した。しかし,前倒し請求分全てを利用するには至らず,残額を次年度に持ち越すこととした。 質問紙調査実施のために,質問紙の印刷費,質問紙配布場所までの旅費,質問紙回収時の郵送費,データ入力にかかる人件費,データ分析に用いる統計ソフトの購入費用として,研究費を利用していく。さらに,実験課題実施のために,実験機材の利用費,技術者の人件費,実験参加者への謝礼,実験実施のために実験場所(滋賀医科大学)まで移動する際の旅費として,研究費を利用していく。特に,実験実施が本格化した後は,頻繁に実験場所へ出張する必要があるため,旅費に多くの研究費を利用することになる。さらに,研究発表のための学会参加費や旅費に加え,執筆した英語論文の英文校閲に研究費を利用していく。
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