2015 Fiscal Year Annual Research Report
汚染恐怖に対するイメージ曝露療法発展にむけた認知神経学的メカニズムの解明
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24730611
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
岩佐 和典 就実大学, 教育学部, 講師 (00610031)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 汚染恐怖 / 触覚イメージ / 嫌悪 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は実験課題の精緻化と実施に取り組みながら,研究成果を論文化した。実験課題については,まず刺激収集と刺激価測定を行った。具体的には,触覚イメージ形成の言語的手がかりとして,嫌悪刺激と中性刺激を作成した。その際,先行研究から感情価が中性的な名詞を45語抽出し,それに形容詞等の文脈情報を加えることで,同一の名詞を用いた嫌悪刺激と中性刺激の候補を各45語作成した。これらについて,嫌悪感の強度,感情価,イメージ鮮明性を測定した結果,同一の名詞を用いた嫌悪刺激と中性刺激を計30対作成することができた。これを用いて,触覚イメージの形成実験を行ったところ,嫌悪刺激において感情の強度とイメージ鮮明性との間に有意な相関が認められず,中性刺激においては両者の間に有意な正の相関が認められた。この結果は,刺激語の感情価によって,感情と触覚イメージ鮮明性との関連の仕方が異なるというH24-H26の間に得られた研究成果を再現するものであった。この刺激を用いたfMRI実験を行う予定であったが,実験の実施先機関の都合もあり,期間内にこれを実施することはできなかった。 さらに,H24-H25年にかけて行った,嫌悪に関する個人差を測定するための質問紙尺度であるDPSS-RならびにDS-Rの作成過程と信頼性・妥当性の検証結果を論文化した。DPSS-Rについては既に査読中であり,DS-Rについても概ね執筆を完了することができた。 本研究はこれまでに触覚イメージと嫌悪の繋がりから,汚染恐怖の病態を理解しようとしたものであった。計画の遂行に不十分な点はあったものの,触覚イメージと嫌悪感,そして汚染恐怖との関連性を明らかにしたものとして,学術的・臨床的な意義を有している。また,嫌悪に関する個人差を測定するための尺度を作成したことにより,今後さらなる研究の素地を作ったものだといえる。
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