2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730622
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小川 景子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70546861)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | レム睡眠 / 夢見 / 脳波 / 自律神経活動 / 情動体験 / 情動調整 |
Research Abstract |
睡眠中に体験する夢にはしばしば情動要素が含まれる。本研究では,夢における情動体験の発生機序と情動体験が生じることの機能的意義(役割)について,脳活動と自律神経活動の両側面から検討を行う。夢における情動体験の機能的意義に関しては,就床前に行った情動体験がレム睡眠中にリプレイ(あるいはリハーサル)されその結果,起床後の情動体験への対処がよりスムーズになることを示す。また,夢の情動体験の出現は,レム睡眠に特有の脳活動のうち扁桃体の賦活が関与することを脳波を用いて示す。さらにレム睡眠中の脳波と自律神経活動を検討することで,自律神経活動(心拍・呼吸・血圧)の変動も情動体験に関与することを示す。本研究により夢の情動要素発生機序と情動要素の伴う夢の役割の解明を試みることで,鮮明で情動豊かな夢の発生メカニズムの解明,情動要素が極端に強く現れる悪夢の発生機序及び悪夢が原因による不眠への対処など臨床応用への可能性も示唆する。 本年度は,就床前に情動体験を行い,その後にレム睡眠を取った群と取らなかった群では,睡眠中の脳活動と起床後の情動調整機能にどのような違いが生じるかを検討した。睡眠前の情動体験は社会的排斥課題であるサイバーボール課題を用いた。参加者はこの課題を行った直後に夜間の終夜睡眠を取り,起床後,再び情動体験を行い情動評価を行った。サイバーボール課題直後の終夜睡眠は,レム睡眠だけ選択的に断眠するレム断眠群と通常の終夜睡眠を取る統制群を設けた。検討では,睡眠前と睡眠後で情動評価の差分値をレム断眠群と統制群で比較した。検討の結果,レム断眠群の方が統制群よりも,起床後の情動評価が悪化していることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,情動体験後の睡眠は13:30-15:00に仮眠を取ることとしていた。さらに,条件は,①情動体験あり(ノンレム+レム)条件,②情動体験なし(ノンレム+レム)条件,③情動体験あり(ノンレム)条件としていた。しかし,この計画では,①②と③で仮眠時間の長さが異なるため,起床後の情動調整効果について,レム睡眠の影響なのか,睡眠時間の長さそのものの影響なのか,分からないことが考えられた。そこで,本年度は,条件設定について再検討し,終夜睡眠を対象に,レム睡眠だけ選択的に断眠するレム断眠群と通常の終夜睡眠を取る統制群を設けた。また,レム断眠群と統制群で総睡眠時間を統一するため,レム断眠群は統制群よりも起床時刻を延長する工夫を行った。結果も仮説どおりであった。引き続き,参加者人数を増やし,データ分析していく必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成25年度)は,本年度行った実験を引き続き行うことで,情動体験の影響を受けたレム睡眠が起床後の情動体験に対する対処過程に及ぼす影響を検討する。具体的には,睡眠中の脳活動および,起床後の情動調整効果について認知的側面からの検討を行う。睡眠中の脳活動については,レム睡眠に特有の脳活動のうち扁桃体の賦活が関与することを脳波を用いて示す。また,起床後の情動調整効果に関する認知的側面からの検討では,社会的排斥課題中の脳波(事象関連電位ERP)を検討することで,排斥課題中の認知機構の検討を行う。 最終年度は,夢見聴取を行い,夢の情動要素と自律神経活動および平成24年度に検討予定の脳活動との関連を検討する(平成26年度)。これらの検討を通し,レム睡眠中の脳活動および自律神経活動が夢の情動要素生成に関与し,レム睡眠中の情動要素生成過程が起床後(日中)の情動体験に関する情動調整機能を担うことを示す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成25年度)の研究費の使用方法について,物品費(200,000円)において解析ソフトMatlabのツールボックスの購入と実験用の消耗品(薬品,ガーゼ,電極のり),データ保存用の電子媒体(HDD,USBメモリ)を購入予定である。旅費(300,000円)においては,日本睡眠学会(秋田)および日本生理心理学会(福井),日本心理学会(北海道)へ参加予定である。また,実験を行うに当たり,謝金(150,000円)を使用する。その他(50,000円)は英文校閲費として使用する。
|
Research Products
(8 results)