2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730622
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小川 景子 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (70546861)
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Keywords | レム睡眠 / 夢見 / 脳波 / 自律神経活動 / 情動体験 / 情動調整 |
Research Abstract |
睡眠中に体験する夢にはしばしば情動要素が含まれる。本研究では,夢における情動体験の発生機序と情動体験が生じることの機能的意義(役割)について,脳活動と自律神経活動の両側面から検討を行う。夢における情動体験の機能的意義に関しては,就床前に行った情動体験がレム睡眠中にリプレイ(あるいはリハーサル)されその結果,起床後の情動体験への対処がよりスムーズになることを示す。また,夢の情動体験の出現は,レム睡眠に特有の脳活動のうち扁桃体の賦活が関与することを脳波を用いて示す。さらにレム睡眠中の脳波と自律神経活動を検討することで,自律神経活動(心拍・呼吸・血圧)の変動も情動体験に関与することを示す。本研究により夢の情動要素発生機序と情動要素の伴う夢の役割の解明を試みることで,鮮明で情動豊かな夢の発生メカニズムの解明,情動要素が極端に強く現れる悪夢の発生機序及び悪夢が原因による不眠への対処など臨床応用への可能性も示唆する。 本年度は,感覚的な嫌悪経験として社会的排斥事象を用いることで,レム睡眠の情動調整機能に関する検討を行った。情動調整機能を検討するための実験操作として,レム睡眠およびノンレム睡眠の選択的短縮を行った。検討の結果,課題後の欲求脅威尺度得点について睡眠前には群間で有意な差は認められなかったのに対して,睡眠後はノンレム短縮群に比べてレム短縮群で有意に高い値を示した。また,レム短縮群のレム持続時間と睡眠後の欲求脅威得点に有意な負の相関が示された。本研究結果より,レム短縮群で排斥に対する社会的痛みが大きくなり,さらにこの痛みはレム睡眠の持続時間が短くなるほど大きくなることが示された。この結果は,社会的排斥という感覚的な嫌悪経験においてもレム睡眠が情動調整機能を持つことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,情動体験後の睡眠は13:30-15:00に仮眠を取ることとしていた。さらに,条件は,①情動体験あり(ノンレム+レム)条件,②情動体験なし(ノンレム+レム)条件,③情動体験あり(ノンレム)条件としていた。しかし,この計画では,①②と③で仮眠時間の長さが異なるため,起床後の情動調整効果について,レム睡眠の影響なのか,睡眠時間の長さそのものの影響なのか,分からないことが考えられた。そこで,作年度は,条件設定について再検討し,終夜睡眠を対象に,レム睡眠だけ選択的に断眠するレム断眠群と通常の終夜睡眠を取る統制群を設けた。レム断眠群と統制群で総睡眠時間を統一するため,レム断眠群は統制群よりも起床時刻を延長する工夫を行った。 しかし実験実施の結果,レム睡眠の完全断眠は参加者の睡眠そのものに重大なダメージを与えることが判明したため,本年度はレムおよびノンレム睡眠の部分断眠を行うこととした。本年度得られた結果は仮説どおりであった。引き続き,参加者人数を増やし,データ分析していく必要がある。また,今後は自律神経活動および脳電位の検討も行う。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成26年度)は,本年度行った実験を引き続き行うことで,情動体験の影響を受けたレム睡眠が起床後の情動体験に対する対処過程に及ぼす影響を検討する。具体的には,睡眠中の脳活動および,起床後の情動調整効果について認知的側面からの検討を行う。睡眠中の脳活動については,レム睡眠に特有の脳活動のうち扁桃体の賦活が関与することを脳波を用いて示す。また,起床後の情動調整効果に関する認知的側面からの検討では,社会的排斥課題中の脳波(事象関連電位ERP)を検討することで,排斥課題中の認知機構の検討を行う。 また,本年度は,夢見聴取を行い,夢の情動要素と自律神経活動および脳活動との関連を検討する。これらの検討を通し,レム睡眠中の脳活動および自律神経活動が夢の情動要素生成に関与し,レム睡眠中の情動要素生成過程が起床後(日中)の情動体験に関する情動調整機能を担うことを示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由として、本年度の実験参加者人数が予定していた人数よりも少ない人数であったため、謝金の使用金額が予定より少なかったことがあげられる。 使用計画について,本年度は最終年度として必要な追加実験および研究成果の論文発表を行う。そのための追加実験謝金と論文発表における英文校閲費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)