2012 Fiscal Year Research-status Report
両眼立体視における観察距離によるスケーリング処理過程の検討
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24730625
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
繁桝 博昭 高知工科大学, 工学部, 准教授 (90447855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 両眼立体視 / 奥行きスケーリング / 観察距離 / 輻輳角 |
Research Abstract |
(1) 観察者が移動したときに生じる両眼視差の変化が,対象の奥行きの知覚にどのように影響を及ぼすかを心理物理実験により検討した.移動前と移動後にそれぞれ静止した刺激を提示するのみの条件と,移動時にもリアルタイムに両眼視差の変化を提示する条件を設け,その奥行き知覚の違いを検討した結果,どちらの条件でも奥行きが一定に知覚されるのは移動後の方が理論値よりも奥行きが小さくなるように両眼視差を設定した刺激であった.すなわち,近距離になるにつれて奥行きが過大視されることが示された.静止した2フレームのみの提示条件と両眼視差の変化を連続的に提示する条件の間では明確な差が認められなかったことから,移動中のリアルタイムな視差変化の情報は,観察者の移動を伴った正確な奥行きのスケーリングに大きな影響を及ぼさないことが示された. (2) 観察距離の情報をもたらす生理的手がかりには輻輳角がある.この輻輳角が奥行きスケーリングに及ぼす影響を実世界に重畳するオートステレオグラムを用いて検討した.透明なディスプレイに壁紙効果を生じさせるオートステレオグラムを提示し,輻輳角を刺激の物理的位置と異なる角度で融合した時に,刺激の奥行き位置がどのように定位されるかを心理物理実験により検討した.実験の結果,定位された奥行き位置は輻輳角から理論的に予測される値よりも刺激の物理的位置に近くなった.また刺激の物理的位置を操作したところ,その物理的距離に依存して知覚される奥行き位置も変化することが示された. これらの実験結果から,(1) 観察者の移動に伴う両眼視差の変化の情報自体は正確な奥行き知覚に大きく寄与することはない,(2) 透明なディスプレイ上に提示した刺激を壁紙効果によって現実世界に重畳した場合,正しい奥行き位置に定位されない,という両眼立体視の知覚特性を示すことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理物理学的研究については順調に進展しており,平成24年度の研究成果は3DSA2013およびECVP2013の2つの国際学会にて成果発表を行う予定である.fMRIの実験については平成24年度より高知工科大学において本格的に稼働したMR装置で実験準備を行い,マルチボクセルパターン分析によるデコーディングの実験を行うために,被験者の視覚野を同定するためのレチノトピーのMRI実験および,刺激の作成を行った.立体刺激を用いた本実験は平成25年度において行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
心理物理実験においては,予定通りプロジェクタを用いてサイズの大きい刺激を投影し,3-4 mの観察距離から観察者が移動する条件で実験を行う.fMRI実験ではマルチボクセルパターン分析による奥行き知覚の推定の手法を用いて,正答率を指標とした両眼視差のスケーリングによる奥行き恒常性の処理領野の検討を行う本実験を中心的に行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は予定よりfMRIの実験の回数が少なかったため,残額が生じた.残額分は平成25年度のfMRI実験の被験者への謝金として用いる予定である.
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Research Products
(3 results)