2013 Fiscal Year Annual Research Report
両眼立体視における観察距離によるスケーリング処理過程の検討
Project/Area Number |
24730625
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
繁桝 博昭 高知工科大学, 工学部, 准教授 (90447855)
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Keywords | 両眼立体視 / 奥行きスケーリング / 観察距離 / 輻輳角 |
Research Abstract |
対象までの絶対距離の情報が両眼視差から奥行きへのスケーリングに及ぼす影響について検討し,以下の成果を得た. (1) 観察者が移動することによる両眼視差の変化が対象の奥行きの知覚に及ぼす影響について,絶対距離を複数設定して検討した.観察者が対象に向かって移動すると絶対距離の長短にかかわらず対象内の奥行きを過大視し,奥行きの恒常性は保たれなかった.また,絶対距離が短い条件の方がその程度は大きく,移動に伴う視差の変化の度合いに依存した.さらに,観察者の移動によって生じるリアルタイムな視差の変化の情報自体は正確な奥行きの知覚に寄与しなかった. (2) 輻輳角を変えることで,対象内および対象間の奥行き知覚がどのように変化するか,また,その変化に違いがあるかを検討した.実験の結果,対象内,対象間のどちらの条件においても輻輳角が小さい方が奥行き検出の感度が上昇する傾向が見られた.ただし,対象間の奥行きの方が輻輳角の変化による感度の変化が大きく,特に対象間の奥行きの処理において,絶対距離の情報に応じて感度を動的に変化させている可能性を示した. (3) 壁紙効果のような見えを生じる刺激を用い,この刺激を物理位置と異なる輻輳角で融像した場合に知覚される奥行き位置を検討した.実験の結果,刺激までの距離の絵画的手がかりを統制した場合でも,刺激は輻輳角の示す奥行き位置には知覚されず,刺激の位置が観察者に近いほど刺激が近くに知覚されることが示された. 以上より,観察者が移動することによる両眼視差の変化の情報は奥行きの正しいスケーリングに影響を及ぼさないこと.輻輳角による絶対距離情報による奥行きのスケーリングの特性は対象内,対象間の奥行きで異なる可能性があること,輻輳角による対象の奥行き定位は刺激の物理的位置に依存することを示した.
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