2014 Fiscal Year Research-status Report
日英バイリンガルのL2語彙表象:閾下プライミングタスクによる検証
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24730630
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中山 真里子 早稲田大学, 文学学術院, 研究員 (40608436)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心的辞書 / 日英バイリンガル / 語彙表象 / 対訳語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は日英バイリンガルを対象に、表記形態が2言語で異なるバイリンガルの英単語の脳内表象の仕組みを英語の熟練度の影響に着目して検証するものである。26年度の研究実績の概要は以下の通りである。 ・前年度までに行った研究結果で得た、外来語(レモン―LEMON)の表象のされ方は、音韻的な類似度が高いという特徴を除いては通常の対訳語(左-LEFT)の表象と質的同じであるという知見を論文にまとめ国際誌に発表した。・申請者の過去研究により日英バイリンガルからは大きなL1-L2対訳語プライミング効果を観察可能であることがわかっている。この特性を利用して、当該研究領域において表記処理のみを反映すると主張されているタスク(same-different task)の妥当性を検証した。この研究は、バイリンガルの語彙表象の仕組みそのものについて行った研究ではないが、表記の異なるバイリンガルは表記の共有なしに意味/音韻特性を2言語で共有できるという特性を生かした研究であった。研究の結果、same-different taskは表記よりも高次な処理過程の影響を受けることを示した。この研究結果は国際誌に受理された。・前々/前年度から継続して行っているバイリンガルのL2語における抑制的隣接語効果の研究では、26年度中に新たな実験を行った後、今までの研究結果を論文としてまとめ上げた。論文執筆にあたり、主張をより強固にするために、さらなる研究が必要と判断した。現在までに刺激の選定を終了しており、実験デザインの最終確認および実験プログラム作成を経て近日データ収集を開始する予定でいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大のプロジェクトであるL2語の隣接語効果についての研究が当初の計画より長引いている点がマイナス点と言えるが、丁寧な検証を重ね説得力の高い研究結果を提示することの重要性を考えると、総合的には概ね順調に進展していると評価する。また、本研究を通し、日英バイリンガルの語彙表象ついて、音韻、意味、表記と様々な角度から研究し、研究成果を発表することができたことも評価できる点であると思える。加えて、当該研究を通して、国際的に活躍する研究者との共著や学術交流が増え、当該研究領域においてプレゼンスを高めることができたことも若手研究者として評価に値する点であると思える。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は、本来26年度で終了の予定であったが、期間延長の承認を受けた。 今後は、バイリンガルのL2(英語)における抑制的隣接語効果について最終実験を速やかに開始し、十分な人数のバイリンガルからデータを収集する。その実験結果を含めた研究結果を論文として投稿することを今後の研究の最終目標とする。論文投稿を持って、若手Bにおける研究を終了する予定でいる。
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Causes of Carryover |
これまでの研究で、第一言語と第二言語の表記の異なるバイリンガルの英語表記表象の仕組みの詳細について提案することが可能になったが、内容に高い説得性を持たせるためには追加的に実験を行う必要があると判断した。しかし、バイリンガル学生を対象としたデータ収集は授業がある時期に限られているために、新学期を待って追加実験を行う必要があり、この実験実施にかかわる費用として未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4~7月の春学期に追加の実験を行う予定でいる。 データ解析に含まれる被験者数は60名程度を予定しており、未使用額は被験者謝礼と実験補助者の謝礼、また新たなデータを含んだ改稿論文の英語校閲代として費消する予定でいる。
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