2014 Fiscal Year Research-status Report
加齢によって低下しない注意機能の解明と事前情報利用の効果
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24730631
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
日比 優子 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 准教授 (80550350)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 注意機能 / 高齢者 / 事前情報の利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚探索課題は注意機能を測定するために最もよく用いられている課題である。この課題では、実験参加者に複数の妨害刺激中に一つだけ提示された標的の有無の判断を課し、刺激画面の提示から実験参加者の反応までの時間を計測する。この課題を用いた研究では、「標的がもつ特徴は何か」についての情報を課題遂行前に実験参加者に知識として与え、後に意図的にこの情報を利用する機能が高齢者において低下することが報告されている。一方、この事前情報を知識として与えるのではなく、同じ特徴をもつ標的を繰り返し提示するといった刺激特性に基づく操作により、自らの意図によらない非意図的な情報の利用を促した場合は、高齢者での機能低下がみられない(Kumada & Hibi, 2004)。 初年度となる平成24年度では、この現象の確認と単純反応操作を用いた事前情報の利用を検討することとした。反応特性に注目し、事前に特徴への単純反応を促す条件を設定した新しい視覚探索課題を用いて、高齢者における直前の「反応した」という事前情報の利用について検討することを計画し、比較対象となる大学生のデータを収集した。続く平成25年度では、研究対象のメインとなる高齢者のデータを収集した。次に、視覚特性に注目し、反応させずに特徴を見せるのみの条件を設定した新しい視覚探索課題を用いて、直前の反応を伴わない事前情報の利用について検討することを計画した。事前に標的特徴を「見た」という経験、すなわち「見た」という事前情報が、後続の視覚探索画面に対する高齢者の反応に影響するか否かを調べた。平成25年度に高齢者のデータ収集、続く26年度で大学生のデータ収集を終了した。最終年度では、論文執筆および投稿を計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度および平成26年度、二度にわたる産前産後の休暇または育児休業により中断したため、学会発表と論文執筆が当初の予定通りには進んでいない。しかし、平成25年度と休業前後に精力的にデータ収集を行ったため、データ収集および分析は終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の主な予定は、平成24年度に比較対象となる大学生のデータ収集および分析、平成25年度に主な研究対象である高齢者のデータ収集および分析、平成26年度に研究成果の発表の予定であった。しかし、2度にわたる産前産後休暇と育児により学会への参加などが困難な状況にあり、おもに最終年度の研究成果発表ができなかった。平成27年度は可能な範囲での学会参加による情報収集に加え、論文執筆および投稿を行う予定である。 具体的な成果の内容は、事前の反応を負荷の少ない単純検出とした手法を用いた新たな視覚探索課題を用いて高齢者が「反応した」という情報を非意図的に利用できるのかについての成果を国際誌に投稿する。さらに、反応を伴わずに標的を「見た」という情報を、後続する探索課題での反応に利用することが高齢者において可能かについての成果を、論文投稿段階まで進める。
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