2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730639
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
藤村 友美 独立行政法人理化学研究所, 情動情報連携研究チーム, 客員研究員 (90623992)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 表情模倣(オランダ) / 表情認識(米国) |
Research Abstract |
本研究は,快と不快表情に対する模倣の心的過程を心理生理学的に明らかにすることを目的としている。他者の表情観察時に生じる表情筋活動は大別して以下の2つに由来する。1つ目は,コミュニケーション機能としての模倣反応である。2つ目は,他者の怒り表情に対して恐怖が表出されるというような感情反応である。本年度は,他者の表情に対する表情表出における模倣反応と感情反応の差異を明らかにする目的で,感情反応としての表情筋活動パターンについて検討を行った。表情筋電図法(facial electromyopraphy: EMG)を用いて,快と不快画像を時系列的に組み合わせた刺激系列に対する表情表出を計測した。その結果,不快感情によって高まった皺眉筋活動は,快画像を呈示することにより低減することが示された。感情反応による表情筋活動は感情的な文脈の影響を受けることが明らかになった。 また,模倣反応の心的機能を検討するため,動画表情と静止画表情に対する模倣反応を検討した先行研究(Sato, Fujimura, & Suzuki, 2008; Fujimura, Sato, & Suzuki, 2010)のデータの再解析を行った。表情に対する表情筋活動と感情経験および表情認識の心理指標の関係について共分散構造分析を用いて分析を行った結果,動画表情については,表情筋活動によって快か不快かといった感情経験が生じ,その感情経験が表情認識を促進するという因果モデルが支持された。この結果は,表情表出が他者理解というコミュニケーション機能の一端を担っている可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,快と不快表情に対する模倣反応の心的機能は異なるという仮説を立て,本年度は不快表情に対する模倣反応の心的機能を明らかにする実験を行う予定であった。不快表情は脅威信号としての役割をもつことから,その感情的意味を素早く検出する必要がある。そのため,不快表情に対する模倣反応は他者の感情理解を促進する機能を支配的にもつのではないかと予測した。この仮説の妥当性を検証するために,本年度は,これまで研究実施者らが集積した表情模倣に関するデータを再解析することに集中した。共分散構造分析を用いた分析から,観察者の感情経験を媒介し表情表出が他者の感情理解を導く因果モデルが支持された。またこのモデルは動画表情においてのみ顕著であったことから,今後の実験においても生態学的妥当性の高い動画表情を使用する予定である。さらに,表情に対する表情表出は感情反応と模倣反応に由来することから,感情喚起刺激に対する表情筋電図の時系列パターンを検討した。研究実施者らのこれまでの研究から,快表情に対する大頬骨筋活動は,不快表情に対する皺眉筋活動よりも立ち上がりが遅く刺激消失後も活動が持続することが示されていた。しかしながら,感情反応としての表情筋活動の時系列パターンについては,不快刺激と快刺激において大きな違いは見られなかった。快表情に対する大頬骨筋活動パターンは模倣反応に特異的であることが示唆される。この結果は,快表情の模倣反応における表情の返報性機能を理解する上で重要な試金石となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のデータ再分析の結果から,表情表出が他者の表情認識を促進することが明らかになっている。今後は,不快表情に対する模倣反応の感情理解促進機能についてさらなる研究を進める。具体的には,脅威信号である怒り表情に加えて,悲しみ表情に対する模倣反応を検討する。悲しみ表情に対する模倣反応は,他者の感情理解の促進機能に加えて,他者への共感性を示すシグナルとしての役割も果たすと予測される。怒り表情と悲しみ表情はともに皺眉筋の活動を伴うことから,この部位における時系列的なパターンの違いと筋活動と感情経験および表情認識の関係性について明らかにする。さらに,悲しみ表情に特異的な口角下制筋における活動量も計測し,顔の上部と下部における模倣反応についても注目する。さらに,表情模倣は社会的文脈や表出者と観察者の社関係性によっても調整されることが知られている(Hess & Fischer, 2013)。今後は,社会的文脈を実験的に操作することにより,表情模倣の感情理解の促進機能と表情の返報性機能を明らかにしていく。具体的には,経済ゲームによって不公平な他者と公平な他者を作り出し,これらの他者の表情に対する模倣反応を検討する。不公平な他者に対しては,表情模倣の返報性機能が作用せず,快表情における表出は低下するが不快表情に対する表出は維持されると予測される。現在は,この実験に向けて予備検討を行っている。さらに表情模倣の返報性に対する動機づけは,実場面ではより高まると予測されるため,シャッターガラスを使った実験室内で上記の実験を再現する。以上の研究を通して,不快表情と快表情における表情模倣の心的機能を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度行った実験は,感情喚起刺激に対する感情反応パターンに着目したため既存の実験機器で対応可能であった。新たな機器の購入を見送ったため,平成24年度分の未使用額が生じた。次年度は,怒り,悲しみ,喜び表情に対する模倣反応を検討するため,日本人の動画表情刺激セットが必要になる。1つの方法として,3D合成画像によって人工的に作成した動画表情刺激を作成することを予定している。この合成画像ソフトを購入する。また実験に伴う実験参加者への謝礼に使用する。また本年度は,国際学会参加予定であるためその旅費として使用する。また電極やペーストなど消耗品の購入にも充てる。
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Research Products
(4 results)