2013 Fiscal Year Research-status Report
体育科における「教師のプロ意識」調査票の開発に関する実証的研究
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24730644
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
厚東 芳樹 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80515479)
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Keywords | 「教師のプロ意識」測定法 / 小学校体育授業 / 三点分析法 |
Research Abstract |
昨年度の研究の中で、作成した「教師のプロ意識」調査票では、他教師から対象教師に向けての「他者評価」と、インタビュー調査を用いた教師の「自己概念」の導出に困難性があったという課題が残った。 そこで本年度は、研究課題①「教師のプロ意識」調査票の開発過程の継続を中心に行った。昨年度の研究成果を踏まえて、「自己概念」「専門技能」「他者認知」を体育授業に当てはめた結果、「反省得点」「運動技能」「態度得点」からの三点分析法を用いれば測定可能ではないかという仮説を導出した。つまり、研究課題②の実施ではなく、上記の学習成果そのものが教師のプロ意識を反映しているという仮説を導出した。 具体的には、12名の教師を対象に,一単元に渡って体育授業を実践してもらい、「反省得点」「運動技能」「態度得点」それぞれを得点化し順位をつけた。その後,Spearmanの順位相関係数を算出した。その結果、いずれの関係も有意(P<.01)な正の相関関係にあった。とりわけ,反省得点と運動技能との間に高い相関関係(r=+.710)が認められた。つまり、教師が体育授業に力を入れて取り組むことで子どもの運動技能が向上し、結果的に子「他者認知」の態度得点が高まる関係にあることがわかった。これらより、「反省得点」「運動技能」「態度得点」からの三点分析法を用いる方法は、「教師のプロ意識」測定法として応用可能であるものと考えた。 そこで、「教師のプロ意識」測定法の結果と体育授業中の教師行動との関係性の検討を新たに設定し、実施した。具体的には、6名の教師を対象に、調査を実施した。その結果、「教師のプロ意識」測定法によって算出した順位の高い上位群の教師(3名)の方がそうでない教師(3名)よりもマネジメント行動の時間が少なく(上位群:13.1%、下位群:23.2%)、プロ意識の高い教師ほど体育授業前の準備が整備されていたことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、予定していた研究仮説とは異なる結果が導出されたこと、研究方法として困難性が認められたことといった課題が残っていた。こうした課題を解決するために、新たな観点より検討・調査していく方法として「反省得点」「運動技能」「態度得点」からの三点分析法を提案した。この方法は、主観的な情報となるインタビュー調査の結果分析よりも効率的で客観的に測定可能な方法に変えることができた。その結果、「教師のプロ意識」測定法として応用可能であるという成果を導出することができた。合わせて、今年度は昨年度に人事異動等の理由で調査できなかった先生方にも新天地で協力頂くことが可能になったことで、「教師のプロ意識」測定法の結果と体育授業中の教師行動との関係性の検討を新たに設定し、実施することまで可能になった。こうした理由より、当初挙げていた研究課題②まで順調に進展させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題③を実施する。すなわち、これまでの研究成果を踏まえて、初任教師の有する「プロ意識」に関する事例研究(研究課題③)を新規に設定した。 本研究は,教師は「プロ意識」を元々有しているものなのか、また初任時代から高い「プロ意識」をもった教師とそうでない教師とにすでに大別されている可能性はないのかを明らかにすることで、教師の成長過程を追究する教師教育研究を推進していくための基盤を築いていきたいと考えた。もっと言えば、教師のキャリア発達の入口に視点をあてて研究することで、教師のキャリア発達のあり方の一旦を導出することを試みる。 調査の対象は、北海道下の小学校教師8名(初任教師)を対象に調査を実施する予定である。調査対象者には、作成した体育科における「教師のプロ意識」測定法を用いた調査を実施する。このとき、体育授業中の教師行動のあり方を導出する。そこで導出したデータと本年度行った研究課題②の結果とを合わせて検討することで、「プロ意識」の高さがどこに現れてくるのか、初任教師の時代から「プロ意識」を有しているのか(どの程度、有しているのか)、どうすれば「プロ意識」を高めていくことが可能なのか、検討することを計画している。なお、実際に実施してもらう体育授業は、小学校教師が最も苦手意識をもっている単元(短距離走,水泳:永島,1974)を実施してもらう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施2年目の今年度は、研究推進が順調に進むことができた。とりわけ、複数校での調査協力を計画していたが、依頼していた教員の人事異動などにより、(1)調査実践校の数を減らした、(2)同一校での実践例を増やすこととしたの2つの対応を行った。その結果、調査に必要な道具準備費(物品費)にかかる予算を大幅に抑えることとなった。また、これには研究実施1年目で十分な成果が出ず、1年目に調査した学校と同じ学校で再度、実験調査できたことも、道具準備費(物品費)などに関わった支出を押させる形になった。 主として、「追証実験の実施」と「研究成果の発表」が主たるしよう計画用途になる。具体的には、過去に実験対象にしてこなかった新規の小学校体育授業現場を対象に、作成した三点分析法を用いた事例研究を実施する予定である。そのため、道具準備費(物品費)などに関わった支出は予定している。また、「研究成果の発表」として学会発表2回(日本教育方法学会および北海道体育学会)と著書出版経費を予定している。
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