2013 Fiscal Year Research-status Report
財政的制約下における義務教育教員人件費政策の過程と帰結に関する実証的研究
Project/Area Number |
24730645
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
橋野 晶寛 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60611184)
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Keywords | 教育政策 / 教育財政 |
Research Abstract |
平成25年度の研究成果として、教育財政に関する理論的・実証的論文を3篇発表した。2篇は教育財政の効率性に関する理論的・実証的研究であり、そのうちの1篇は24年度に行った学会発表を発展させた上で論文化したものである(『日本教育行政学会年報』39号掲載論文)。教育政策・行財政研究における効率性を概念および測定手法の史的展開の面から考察し、日本の教育財政へ含意を明らかにした。一方、紀要論文(『北海道教育大学紀要』64巻1号掲載論文)では、日本の教育財政における効率性の実証分析を行った。特に、地方教育行財政における効率性に関して、行政・経営規模(基礎自治体規模および学校経営規模)の観点から考察を行った。 他方の論考(『北海道教育大学紀要』64巻2号掲載論文)では、教育財政をめぐる政策過程について実証分析を行った。地方教育財政の政策過程の分析のための基礎的考察として、権力の集中分散に関わる政治・行政制度が教育分野への一般政府支出に与える影響について、鳥瞰的な視点から計量的実証を試みた。政治制度が、教育財政支出水準のみならず漸増・漸減主義および政治アクターの政策選好の反映度にどのような影響を与えるのかという点を分析し、その含意として、1990年代以降日本において進行した2つの中央における統治機構改革および地方分権改革が教育財政に及ぼした(及ぼしうる)影響を析出した。 これらの論文による成果発表と並行して、教員養成大学学生に対して進路選択に関する質問紙調査を行い、2000年代以降の教育財政に関わる制度改変が教員供給に与えうる影響についての分析・考察のためのデータの収集・整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果発表に関しては、査読付き学会誌論文を含めて3篇の論文を発表することができ、比較的順調に進んだと評価できる。一方で、25年度中に実施する予定であった2自治体への教員人件費政策に関するヒアリング調査については、日程調整がうまくいかず、調査実施が26年度へずれ込んだため、26年度早々に調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策の主な内容は次の3点である。 まず第1は、自治体に対するヒアリング調査を完遂させ、その成果を論文化することである。特に、長期的な行政改革の一環として、教員定数・給与の見直しを行ってきた自治体を中心にヒアリング調査を行い、公務員人件費総額の抑制・削減という地方政府の分野横断的な政策課題が存在する中で、首長ら選出部門が教員人件費配分に係る方針策定にどこまで関与したのか、この意思決定について有権者から政治家(首長、議員)への委任関係が成立していたのか、長期的な戦略として教員の「質」と「量」をどのように確保しているのか、という点を明らかにする。 第2は、25年度に引き続き、学生に対して進路選択に関する質問紙調査を実施し、2000年代以降の教育財政に関わる制度改変が教員供給に与えた影響について、データ収集およびデータ分析を行うことである。教員採用の動向に関連した仮想の質問と進路選択との関係を多変量解析によって分析し、どのような層が採用方針の変更に反応するのかという点を明らかにする。 そして第3は、この3年間の研究の総括であり、民主性と効率性という観点から、財政的制約下における教員人件費政策の最適戦略を提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度実施予定であったヒアリング調査が年度内に完遂できなくなったため、その旅費分を26年度に繰り越し、26年度に調査を実施することとした。 26年度の早期に、北海道、岡山県、埼玉県等への教員人件費政策に関するヒアリング調査を実施する。「次年度使用額」分は全てそのための旅費として使用する(北海道教育庁へのヒアリング調査:往復交通費5千円×2回、岡山県教育庁へのヒアリング調査:往復交通費9万円、宿泊費1万円、埼玉県教育庁へのヒアリング調査:往復交通費5万円、宿泊費1万円)。
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Research Products
(4 results)