2013 Fiscal Year Research-status Report
集団思考の深化を図る授業過程の構築に関する理論的・実証的研究
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24730647
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
杉本 憲子 茨城大学, 教育学部, 准教授 (70344827)
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Keywords | 集団思考 / 授業過程 / 授業研究 |
Research Abstract |
本年度は、下記の点を中心として研究を進めた。 1)前年度の計画に基づいて集団思考の成立・深化の具体像とそれに関わる諸条件の考察に関わる授業研究を実施した。特に小学校の国語、生活科、社会科の授業の観察・記録、資料の収集を行うとともに、授業者等との協議を行った。記録した授業に関しては、授業記録の作成および資料整理を行ない、考察に着手している。 2)集団思考の成立を支える学習基盤の形成という観点から、本年度は年間を通して小学校の一学級を対象とした継続的な授業観察および授業者との協議を実施した。児童相互の発言の関わりとそれを促す教師の働きかけ・指導法に視点を当てた観察を実施し、相互の考えを聞く学習基盤づくり、ノート・ワークシート等の活用により授業前の段階で授業者が児童の考えを把握しそれに基づく授業展開を行なうこと、授業時の板書およびそれまでの学習過程における板書・資料等の効果的活用・掲示など、一授業時間内で展開される事がらのみでなく、児童相互の考えの関連づけを図るための授業者の日常的な働きかけや指導法等について観察することができた。 3)本研究が課題とする児童・生徒相互の集団思考の場としての授業の意義・課題について、現代の子どもの自己形成や他者関係の課題の観点から検討し、雑誌論文としてまとめた。社会の変容に伴い求められる力は多様化している一方、現代の子ども達の抱える自己の存在や他者関係への不安も指摘されている。個々の子どもが教材と向き合い、その教材を介して互いの考えに共感したり、違いを見つけ受けとめたりしていく授業という場の持つ特質と重要性について、小学校の実践事例を取り上げて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由:今日の児童・生徒の学力状況や自己形成・他者関係状の課題を踏まえて授業における集団的な思考の場の意義を明らかにするとともに、理論的研究・先行研究をもとに授業における思考の相互関連の立ちあらわれる場およびそれを促す教師の指導について考察を行なった。また具体的な授業実践の場を通して集団的な思考の成立・深化とそれを促す学習基盤の形成過程を明らかにするため、研究計画に即して本年度は小学校での授業研究(継続的な学級の観察等も含めて実施)を実施することができた。これらの記録・資料に基づく考察を今後引き続き進め、論文等として研究成果をまとめていく。
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Strategy for Future Research Activity |
1)昨年度実施した研究授業の記録・子どものノートやワークシート等の資料等をもとに分析を進める。関連する先行研究・先行実践等も有効に活用することにより、集団思考の深化の過程とそれを促す学習基盤等について研究成果をまとめ、研究成果については、学会(日本教育方法学会等)あるいは研究論文等として発表する。 2)実施した研究授業に係る資料整理・記録作成では、必要に応じて大学生・大学院生などの協力を得ながら効率的に研究を進める。研究授業の協力者や実施校については、昨年度までの実施体制を生かすことにより、研究の深化と効率的な実施を図るものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、継続的な授業観察については県内の学校を対象として実施することができたため、旅費・通信費等が当初の予定に比べてやや抑えられたこと、また研究授業の題材や収集資料の関係等により、研究授業に係る教材費および記録の整理等に関わる謝金がやや低く抑えられたこと等による。 次年度は、研究成果のまとめに関わって「物品費」として、集団思考の理論的・実証的研究に関わる関連図書の購入の他、記録用の消耗品等に使用する。また日本教育方法学会等をはじめとする関連学会、先進的実践校調査・資料収集のための研究会参加、および研究の継続的実施の観点から本年度も学校現場での授業観察・記録を組み入れる予定であり、そのための「旅費」の使用を予定している。また研究授業の資料整理等に関わる「人件費・謝金」の使用と、通信費等に係る「その他」の費用の使用を予定している。「次年度使用額」も合わせて上記の研究実施のための計画的で有効な使用を進める。
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