2013 Fiscal Year Research-status Report
貧困化する現代日本社会における「子育て・教育費支援制度」の総合的・実証的研究
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24730648
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
白川 優治 千葉大学, 普遍教育センター, 准教授 (50434254)
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Keywords | 教育費 / 教育費支援制度 / 子育て支援 / 教育財政 / 教育行政 / 子ども福祉 / 教育の機会均等 / 地域格差 |
Research Abstract |
本研究は、子育て支援政策や福祉政策、教育費支援政策等の政策目的を問わず、子どもの成育過程を支える諸政策を「子育て・教育費支援制度」と包括的に位置づけたうえで、現代日本における、国・都道府県・市区町村の実施する教育費支援制度の実態を明らかにし、各学校教育段階における教育費支援について全国的な最低基準と許容される地域間格差の在り方について政策的含意を得ることを目的とするものである。 この目的を達成するために、研究期間において、①国・地方自治体が実施している「子育て・教育費支援制度」の歴史的経過の分析(①歴史的検証)、②地方分権下における教育行財政・福祉行財政の国と地方自治体の機能分担の理論的検証(②理論的検証)、③教育費支援のために国・都道府県・市区町村において実施されている各諸制度の実証分析(③実証的検証)、④①②③の成果の融合による、教育費支援について全国的な最低基準と許容される地域相違の政策的検証(④政策的含意の析出)の4つの研究に取り組んでいる。 平成25年度は、昨年度に引き続き「①歴史的検証」、「②理論的検証」を進めるとともに、「③実証的検証」のための準備作業を中心に進めた。研究実績としては、分担執筆として参加する機会を得た、耳塚寛明編『教育格差の社会学』(有斐閣、2014年)に「教育格差と福祉」(pp.199-228)として、「子育て・教育費支援制度」の制度配置の基本的な論点を提示した。そこでは、教育格差の観点から困難を抱える子どもに対する支援制度の類型を整理するとともに、地域格差の観点から地理的・空間的な範囲での対象者の設定の在り方を理念的に考えることが必要であることを指摘し、それらの理念的整理のもとで、現行制度がどのように位置づけることが可能かを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、平成25年度は、前年度に引き続き「①歴史的検証」と「②理論的検証」を行うための資料収集等を進めるとともに、「③実証的検証」として都道府県・市区町村を対象とする実態把握のための質問紙調査を準備し、実施するを計画であった。 平成25年度は、この計画に沿い、「①歴史的検証」と「②理論的検証」を行うための資料収集を継続的に進めるとともに、「③実証的検証」のための各都道府県・市区町村を対象とする質問紙調査の準備を進めた。耳塚寛明『教育格差の社会学』(有斐閣、2014年)に「教育格差と福祉」として分担執筆する機会を得、同書が刊行されたことは、「②理論的検証」の成果の一部である。「③実証的検証」に関しては、政策変動を背景に研究計画の変更することとした。具体的には、平成25年10月に、平成26年度からの消費税の増税と「社会保障と税の一体改革」の実施が政府方針として提示され、同年12月に関連法が成立したことから、国の子育て支援制度改革が確定した。このことは、地方自治体の制度・政策にも影響を与えるものであり、本研究課題に直接かかわる制度・政策の重大な変更である。また、同年11月には、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」の改正があり、公立高等学校実質無償化制度から高校生等奨学給付金制度への制度変更が行われた。これらの政策変動を勘案し、平成25年度中に実施するべく準備を進めていた各都道府県・市区町村への質問紙調査は、この制度改正を踏まえ、平成26年度に実施することが研究課題の達成上重要であると考えたためである。 このような研究経過を踏まえ、「③実証的検証」のために質問紙調査の実施は延期としたが、調査票作成等は進んでいること、また、「②理論的検証」に関して、分担執筆書が刊行されたことから、本研究は「おおむね順調に進捗している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、研究目的を達成するために、「①歴史的検証」「②理論的検証」「③実証的検証」をその内容とし、文献研究と質問紙及び資料提供依頼調査(以下、質問紙調査)をその研究方法として取り組んでいる。そのため、研究経費についても文献収集と質問紙調査のための経費が主な支出項目となっている。 【現在までの達成度】で記載の通り、本研究課題に関しては、平成25年中に、国レベルでの複数の大きな制度変更が行われる方針が示された。このため、この制度変更の影響等を勘案し、当初平成25年度中に計画していた質問紙調査は、平成26年度実施に延期することとした。この調査は本研究全体でも中心を占めるテーマであり、研究費の中心を占めていたことから、大きな次年度使用額が生じることになった。しかし、調査準備は進んでいることから、この次年度使用額の発生は研究計画全体に影響するものではない。 このような状況を背景に、平成26年度は、前年度準備を行った「③実証的検証」の質問紙調査を年度前半に実施するとともに、年度後半には研究成果報告を行うなど、最終年度としての研究を着実に進展させ、それに伴い計画的に研究費を執行する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、平成25年度中に、「③実証的検証」として、質問紙調査を実施する計画であった。しかし、同年度中に本研究課題に関して、国の制度・政策について複数の大きな制度変更方針が決定されたことから、調査実施を次年度に延期することとした(具体的内容・背景は【現在までの達成度】に記載)。そのため、次年度使用額が生じている。 この次年度使用額が生じた背景は、政策状況に対応するための当初計画の延期であることから、執行計画としては当初予定内容に沿って執行する。
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Research Products
(1 results)