2012 Fiscal Year Research-status Report
ペルソナ/シナリオ法による保育者志望学生の描画指導案作成力の向上
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24730649
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
若山 育代 富山大学, 人間発達科学部, 講師 (90553115)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 保育者志望学生 / ペルソナシナリオ法 / 幼児の目線に立った描画指導案 / 評価ルーブリック |
Research Abstract |
本研究の目的は,幼児の目線に立って描画指導案を作成する力を保育者志望学生に獲得させることと,その力を評価する評価ルーブリックを開発することである。この目的のもと,平成24年度は2つの研究を行った。 研究1は,再現的描画指導(運動会や遠足などの経験を再現して描く描画)の言葉がけの項に学生がどのような記述を行っているかを分析した。その結果,複数の学生に共通していたのは,「描きたいイメージがわかない子」を想定していたこと,そして,そうした子どもに対して,「運動会でどんなことが楽しかった?」など運動会の楽しい経験を子どもに思い出させる言葉がけを計画していたことであった。この結果から,「子ども理解」という規準からみると,学生は,子どもがなぜ描けないのか(例,たくさんの記憶の中から描くものを焦点化できないので描きたいイメージがわかない)を想定し,言葉がけを決めるという点で,高い評点の段階にあることがうかがえた。 こうした結果を受け,研究2では,中堅保育者と学生では「子ども理解」という規準においてどのような違いがあるのかを検討した。その結果,中堅保育者は13パターンほどの予想される子ども像を想定し,その子どもに対する言葉がけを考えていたのに対し,学生は6つほどであった。このことから,「子ども理解」という規準において,中堅保育者も学生も具体的な子ども像を思い浮かべて,なぜその子どもがそのような行動をとるのかの想定から援助を考えている点は共通している。しかし,学生は中堅保育者に比べ,想定する子ども像が少ない。 以上から,学生は子どもの姿に基づいて子どもの目線に立った指導案を作成する力は持っているものの,そこで想定される子どもの姿のレパートリーが少ないという点については中堅保育者よりも子どもの目線に立って描画指導案を作成する力が弱いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は,①幼児の目線に立って描画指導案を作成する力を保育者志望学生に獲得させることと,②その力を評価する評価ルーブリックを開発することである。 現在のところ,「研究実績の概要」の項で述べたように,②の学生の描画指導案を作成する力を評価する評価ルーブリックの開発と,それを用いて学生の力量を評価する作業は行えた状況にある。しかし,①の幼児の目線に立って描画指導案を作成する力を保育者志望学生に獲得させることとはまだ行えていない。つまり,現在までの達成度は50%ほどである。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」の項で述べたように,本研究の目的の一つである,「幼児の目線に立って描画指導案を作成する力を保育者志望学生に獲得させる」点について,平成25年度はペルソナ/シナリオ法(以下,P/S法)を用いて重点的に取り組む。具体的な取り組み手順は,次の通りである。【実験参加者】保育者養成課程に在籍する学生約30名を対象とする。【実験材料】部分指導案をそれぞれの参加者に渡し,描画指導案を作成させる。【手続き】まず,部分指導案をそれぞれの参加者に渡し「この部分指導案の用紙を使って,描画の指導案を作成してください。年齢や描画の活動内容は自由に選んでもらってかまいません。」と教示する。加えて,「この指導案を作成する最中は,あなたがどのようなことを考えているのかを言葉にして表わすようにしてください。」と教示する。別日に再度,来室してもらい,P/S法を実施する。P/S法実施後に,再度,同じ手順で描画指導案を作成させる。【P/S法の実施】ペルソナシートを作成する。中堅保育者と学生が6~13の具体的な子ども像を想定して描画部分指導案を作成していた研究結果をふまえ,最低でも6人のペルソナを学生に作成させる。その際,6人のペルソナの特徴が重ならないように配慮させる。6人のペルソナシートを作成した後,改めて描画指導案を作成させる。その際,「この6人のペルソナ全員が楽しめる,前回と同じ描画指導案を作成してください」と教示する。【評定】参加者がP/S法の前後に作成した指導案の作成過程における発話を文字化し,プロトコルにする。この発話プロトコルを評価ルーブリックである「理解」「発想」「構想」「批判」のフレームワークのもとに分類する。【予想される結果】P/S法後に実施する描画指導案作成時の発話プロトコルのほうが,P/S法実施前よりも高レベルになると予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,23rd EECERA(European Early Childhood Education Research Association) Conferenceの参加費及び宿泊費・交通費等と,その他国内学会での参加費及び宿泊費・交通費等,データを保存しておくバックアップ用HD,その他実践にかかる物品費のために研究費を使用する予定である。
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Research Products
(4 results)