障害者用駐車スペース利用をめぐる市民の行動の適正化を促す啓発のあり方

2012 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24730650
• Research Category: Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
• Research Institution: University of Toyama
• Principal Investigator: 西館 有沙 富山大学, 人間発達科学部, 准教授 (20447650)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 海外事例の収集

Research Abstract

今年度は、障害者用駐車スペースの適正利用が実現している海外における啓発の実施状況とその効果に関する実地調査を行った。これまでの研究をもとに、ヨーロッパの7か国、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.の計8か国を選定し、これらの国における障害者用駐車スペースの運用状況、啓発活動の有無とその効果について調査した。実地調査は旅費の支出を抑えるため、また事前の資料収集等に時間を要したため、9月にまとめて行った。
調査地はいずれも障害者用駐車スペースの利用資格者を定め、資格者に許可証を交付し、許可証掲示のない車両が障害者用駐車スペースに駐車した場合の罰則を設けていた。調査対象国の居住者へのヒアリングや文献及び資料より、啓発活動が大々的に展開されている事例は確認されなかった。しかし、各国の居住者は、障害者用駐車スペースの許可証制度や罰則制度を広く認知している様子であった。
調査地は路上に駐車区画が多く設けられており、その中に障害者用の区画もあった。障害者用の区画に表示されている身障者マークはそれほど大きくなかった。また、一部の国では障害者用の区画のみを青く着色していたが、多くの国ではそのような区画を目立たせる対策をとっていなかった。しかし、いずれの国も障害者用駐車スペースの位置を示す看板（身障者マークが表示されている）の周りに、宣伝看板や標識看板、自転車等が置かれていなかったため、ドライバーはその区画が障害者用であるか否かを容易に識別できると思われた。実地調査より、違法駐車は数件あったものの、おおむね適正に利用されていた。駐車場を職員が定期的に見回る様子が観察されたことから、障害者用駐車スペースに関する法律や制度が市民に広く認知されていること、見回りの職員等を目にすることで法制度による抑制効果が有効に働いていることがうかがえた。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

今年度は研究1～4のうち研究1を実施することを計画していた。その計画通り、今年度は研究1を実施した。また、研究1の実施にあたり、計画書には事前に資料等を収集し、渡航期間を最小限に抑えると記していたが、これも計画通り、9月の可能な限り短い期間の中で各国を回り、調査を行った。

Strategy for Future Research Activity

今年度より、啓発活動の効果の検証を行うことを計画している。現在は、啓発活動を実施し、その効果を検証する駐車場の選定を行っているところである。選定条件は、不特定多数が利用する商業施設の所有する駐車場であること、50～100台程度の駐車区画を備えていること、現時点において区画内を着色するなどの啓発的な対策がとられていないことなどである。
今年度は、選定した駐車場における実験的検証について、駐車場所有者の許可をとること、啓発手法として設定している内容において必要となる設備等を用意すること、実験協力者を募り詳細な実験日程及び計画を作成すること、実験を実施することを、段階的に進めていく。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

実験を行う駐車場選定や、実験に関する許可の取得等の進行状況により、実際に実施できる実験数は異なるが、今年度は1つの実験を6か所の駐車場において実施することを予定している。
そのため、実験に使う看板およびポスターの作成、施設の来場者に配布するためのチラシおよびアンケートの印刷に費用を充てる。また、障害者用駐車スペースの利用状況を観察、記録するための機器および周辺機器の購入にも研究費を充てる。さらに、実験補助者への謝金、実験地の選定や研究打ち合わせに要する交通費等に研究費を充てる。