2012 Fiscal Year Research-status Report
「専門職の学習共同体」としての学校に関する基礎的研究
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24730655
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
織田 泰幸 三重大学, 教育学部, 准教授 (40441498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 専門職の学習共同体 / 教育経営 / 北米(アメリカ・カナダ) |
Research Abstract |
本研究が対象とする「専門職の学習共同体(professional learning community)」は,子どもの学び,教師の同僚性・協働性,職能発達,授業研究などに主眼を置いた従来の「学びの共同体」に関する議論を,学校全体での質の高い教育成果,校長のリーダーシップ,アカウンタビリティ,学校の変革・改善のプロセス,学校の組織文化といった視点をより明確に意識して発展させている。そのため,本研究は,我が国の学校経営の研究と実践に対して,意義深い知見を提示できると考えられるが,「専門職の学習共同体」は,北米において生まれた学校モデルであるため,我が国の学校経営実践の参考にするためには,その基盤となる考え方を詳細に吟味する必要がある。 このような認識のもと,本年度は,アメリカの教育学者リトル(Judith W. Little)の同僚性の研究に注目し,その特徴について概観したうえで,「専門職の学習共同体」の観点から,その意義について考察を加えた。 今年度の研究成果は,リトルの同僚性の研究について,彼女の前提とする学校観と関連づけながら体系的に整理・検討する作業を通じて,①成功を収める学校の教師集団の相互作用の特徴を明らかにしていること,②概念的に無定形な同僚性の形態を明確にし,イデオロギー的に楽天的な同僚性の可能性と限界を指摘していること,③「協働文化を育む学校」を支援するための環境の重要性を指摘していること,の3点をその意義として明らかにできたことである。さらには,「専門職の学習共同体」の研究とは,学校改善のプロセスに対する関心は共通するが,児童・生徒の学習とその成果,校長のリーダーシップ,学校の組織文化といった視点はあまり強調されていないことを指摘することができた。 また,「専門職の学習共同体」と関連する様々な文献の収集と検討を通じて、次年度の研究課題を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,「専門職の学習共同体」の基盤となる考え方のうち,リトルの同僚性に関する研究について,詳細に整理・検討することができた。文献研究の成果は,中国四国教育学会(11月)で報告され,その後,学会での質疑応答の結果を踏まえて,中国四国教育学会研究紀要に論文を掲載することができた。さらには,アメリカ教育史研究会において,「専門職の学習共同体」に関するこれまでの研究成果を発表する機会を得て、今後の研究の参考となる様々な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,引き続き「専門職の学習共同体」関連の文献を理論的に整理・検討する作業を通じて、アメリカでの学校訪問と聞き取り調査のための視点や項目について明確にする。その際の課題は,以下の3点である。①教育経営の組織論やリーダーシップ論の観点を踏まえながら、従来の「学びの共同体」の議論との違いを明確にすること。②学校の変革・改善(成長や成熟)のプロセスに対する各論者の理解を明確にすること。③事例校の参与観察や聞き取り調査のための視点や観点を明確にすること。文献研究の成果は,日本教育経営学会(6月)と中国四国教育学会(11月)で定期的に発表する。その後,学会での質疑応答の結果を踏まえて,中国四国教育学会研究紀要と三重大学教育学部紀要に論文を掲載する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度使用しきれなかった研究費については,次年度以降に研究を進めるにあたって必要となる文献の購入に充てる。
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