2012 Fiscal Year Research-status Report
教育ガバナンスにおける「学習する組織」の創造と持続的発展に関する実証的研究
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24730663
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
篠原 岳司 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20581721)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学習する組織 / 分散型リーダーシップ / 教育ガバナンス / 学習 |
Research Abstract |
平成24年度は、基礎研究と比較研究の領域で本研究課題における具体的な進捗が見られた。第一に、基礎研究領域では、教育ガバナンス論の再構築という教育行政学の課題において分散型リーダーシップの理論が貢献しうるという点を明らかにした。また、分散型リーダーシップが重視する「学習」の概念を、教育ガバナンスの再構築における鍵的概念とし、その「学習」を組織する実践的課題を析出することができた。この理論的探究の成果については既に論文化しており、現在は学会の審査を待っているところである。 第二に、比較研究の領域において、米国の学校における「学習する組織」の調査に向けた予備的調査を進めることができた。シカゴ市内で自律的学校改善を支える非営利組織「Strategic Leaning Initiative」の取り組みに注目し、貧困地域において保護者と教師と地域住民の共同による学校自治を支える実践論および教育経営論を学び、現地訪問調査では組織の代表であるSimmons氏にヒアリングもして、日米の「学習する組織」の実践論を交流した。次回の訪問時には、この組織が支援に入っている学校を訪問し、学校改善の中長期的な過程をヒアリングと資料から明らかにするとともに、その過程において中間団体である「Strategic Learning Initiative」がいかなる取り組みを進めているかに注目していく計画である。 これらの他、「学習する組織」に関する理論研究ではAハーグリーブスの著作の検討を中心的に進めていたが、センゲの「学習する組織」論や「専門職の学び合うコミュニティ(Professional Learning Community)」論を研究する他の論者の成果により注目しなければならない。次年度以降、これらの議論の到達点と課題を明らかにしていく作業が求められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学内外の業務増加と教育業務の激化によって、当初想定していたエフォートどおりに研究時間を確保できない厳しい勤務状況があった。にもかかわらず、初年度としては基礎となる理論研究で進捗が見られたこと、そして海外との比較研究を新たに進める上で、実地調査の下地が作れたことは、次年度以降の研究に向けて重要な成果だと認識する。 日本国内の研究対象である福井県内の学校および教育行政機関とは、研究会等によって関係をつなぎながら、中長期的に学校改善の展開を追うための準備をしている。さらに、所属研究機関がある滋賀県内においても、関係者との研究協議の機会を積極的に持つことができ、今後の県内における調査の可能性も広がっている。 これらのことから、おおむね順調に研究は進められているように考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究目的にも示していたように、基礎研究領域として「学習する組織」および「Professional Learning Community」の諸理論の整理を進めていく。さらに、わが国における事例研究にも着手し、学習と実践のコミュニティがいかに創造されていくのか、またそれはいかに維持され、何を契機に何によって発展していくものなのか、これらの実践上の課題についても進めていく。また、シカゴの非営利組織が学校改善の媒介項として機能する学校を訪問し、海外における「学習する組織」の事例研究も進めていく計画である。 そのためには、自身の研究組織として、学外の研究者との研究会の場を有効活用していくこと、また英語での研究成果の発信に努め、円滑に海外比較研究を進めること、さらに所属研究機関での業務の見直しによってエフォートを計画どおりに確保すること、が必要となる。これらを自らの研究条件整備の課題として示しておく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用においては、アメリカへの渡航費および滞在費等にかかる経費として約30万円を確保すると共に、英語論文の執筆にかかる英文校閲の経費に約10万円を想定しておく。また、国内のフィールドワークを行う上で、学校および教育行政機関を訪問する旅費として約20万円を見積もり、関連学会での報告および資料収集、滋賀県内および福井県の学校および教育研究所の他、北海道や東京都の学校および教育行政機関への訪問も進めていく。物品については、次年度使用額として110,949万円を繰り越していることから、型が古くなり動作が不安定になりつつあるノート型パソコンの買い換えで約15万円を見積もる。その他、調査に必要なICレコーダーに約1万円、研究資料作成等に必要な消耗品(紙、プリンタートナー、電池など)に約5万円、研究資料としての国内図書、海外図書の購入費を約14万円分として、総計約90万円の使用計画とする。ただし、実際の旅費および調査費の使用状況を見て、物品費の使用を調整する可能性がある。
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Research Products
(6 results)