2014 Fiscal Year Research-status Report
教育ガバナンスにおける「学習する組織」の創造と持続的発展に関する実証的研究
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24730663
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
篠原 岳司 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20581721)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育ガバナンス / 学習する組織 / 専門職の学習共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、「学習する組織」に関わる理論研究および福井県を対象とした事例研究において進捗を得た。第一に、「学習する組織」の理論研究においてかねてより注目されている「専門職の学習共同体(Professional Learning Community)」論を理論的かつ実証的に発展させてきた現ボストンカレッジのハーグリーブス教授(Andy Hargreaves)教授の著作Teaching in the Knowledge Society(Teachers College Record、2003)を福井大学の木村優准教授、東京大学の秋田喜代美教授と共に翻訳刊行した(木村・篠原・秋田監訳『知識社会の学校と教師』金子書房、2015年2月)。第二に、第一との関連でハーグリーブス教授を日本に招聘し、翻訳刊行と合わせた研究交流会・講演会(福井大学、東京大学)を開催し、学校改革における世界の潮流の中で日本の改革の現在地点、その分析と評価、そして今後の方向性について議論を交わした。その中では、日本の学校における授業研究および校内研究の実践的蓄積、日本の教師における共同学習の文化が、「専門職の学習共同体」の議論の中で世界的に見ても先端を行くものであることが確認されると共に、それらを維持・発展させるための我が国の教育行政における条件整備の拡充と、学校経営における「学習する組織」づくり過程の解明が今日の改革の動向の中で改めて浮き彫りにされた。第三に、福井県において新たに安居中学校(福井市)の協力を得て、関係する教員が書き綴る実践記録を収集しそれらを参照すると共に、学校を訪問しての授業研究場面への参加、そして関係教員への聞き取りを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度も、当初の想定に比して、本研究課題の遂行にかかるエフォートの配分が実質的に大きく減少せざるをえない状況が続いている。特に、平成25年以降所属大学における教育業務負担が増加したことに加え、平成26年度は文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」の地域課題研究を新たに受託しリードしたことが、本科研のエフォート減少の一つの要因となった。また、研究対象の状況に変化が見られたことも進捗がやや遅れることとなった原因の一つである。比較研究の対象として想定しているアメリカのシカゴ市およびボストン市の既知の学校関係者に異動があり、継続的な調査が困難となり訪問を断念した経緯もあった。しかし、そうした事情がありながら、ハーグリーブス教授および福井市の安居中学校に研究協力が得られ、当初計画を微修正して「学習する組織」の創造と持続的発展に関わる理論的かつ実証的な研究の足場を維持できたことは一つの成果だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であることから、学習する組織の創造と持続的発展の問題に関わり、(1)これまでの調査研究でその意義が確認されてきた「専門職の学習共同体」の理論的到達点を明らかにすること、(2)日本における「専門職の学習共同体」の創造・維持・発展のプロセスを、教師の協働的な学びの実例に即して解明すること、(3)(1)および(2)の研究を踏まえ教育ガバナンスにおける「学習する組織」の創造と持続的発展に関する議論を、世界的な教育改革の動向・潮流の中で捉え、必要とされる条件整備と経営手法を析出すること、の3点に取り組むことでまとめとしたい。アメリカの学校事例との比較研究を実行するには現時点で難しい現状があるが、ハーグリーブス教授と連絡をとり、ボストン近隣における学校調査について実現できるよう新たに協力を仰ぐことにする。これらの研究成果を論文としてまとめたのち、学会発表、図書刊行などの形で公表し、関連学会等の議論の中で本研究の成果とさらなる課題を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
平成26年度中に実施する計画であったアメリカにおける学校訪問調査を実施することができなかったことから、その旅費として想定していた額の執行が進まず、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にあたり、再度アメリカ調査の計画を立てて、平成26年度には実施できなかった現地学校調査、教師の学習を支援する民間団体の調査、そして現地研究者(ハーグリーブス教授・ボストン大学・他)との研究交流を進めていくことで、次年度使用額分の支出を行っていく。その他に、資料収集にかかる経費、研究成果公表にかかる旅費、雑費(資料整理・印刷代)なども想定し支出計画を立てていく。
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Research Products
(8 results)