2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730670
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安部 芳絵 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (90386574)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 子ども支援 / 子育て支援 / 災害復興 / 子ども参加 / 専門性 / ゆらぎ / 東日本大震災 / 中越大震災 |
Research Abstract |
これまで「災害弱者」としてケアの客体ととらえられてきた子ども・子育て期の親が、災害復興の主体となるために、支援者が有する専門性を実証的に明らかにすることを目的として、以下の研究を進めた。 【具体的内容】 (a)文献調査…中越大震災および東日本大震災における子ども・子育て支援にかかわる市長を収集するとともに、63市町村で策定された東日本大震災復興計画を子ども支援の視点から分析した。(b)インタビュー調査…災害復興期に求められる支援者の専門性を明らかにするために、①子ども支援に関して公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンジャパン(SCJ)職員へ、②子育て支援に関して長岡市職員・市民へインタビューを実施した。(c)研究の中間まとめ・公表 【意義・重要性】 (a)文献調査…東日本大震災の市町村復興計画は63市町村で策定され、その全動向はつかみにくい。策定された計画は、今後より具体的な実施計画や第二次、第三次計画の策定につながることが予想され、現段階で子ども支援施策がどのような位置づけをされているのかを明らかにすることは重要である。(b)インタビュー調査…①では、現場で「ゆらぎ」を感じていた職員が、インタビューが進むにつれて「ゆらがない力」を見出し、支援の軸を獲得しつつある。②については、中越大震災の経験を生かした乳幼児の親が主体となる防災の取り組みが明らかになった。(c)研究の中間まとめ・公表:日本教育政策学会での発表、ブックレットの原稿執筆、学会の論文投稿(査読あり、印刷中)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで「災害弱者」としてケアの客体ととらえられてきた子ども・子育て期の親が、災害復興の主体となるために、支援者が有する専門性を実証的に明らかにする、という研究目的にのっとり、研究計画を実施した。 (a)文献研究では東日本大震災復興計画の内容分析を行った結果、災害復興期にみられる子ども・子育て支援施策の固有性とその課題が明らかになりつつある。とくに、災害後の子ども・子育て支援施策は「心のケア」に偏りがちであるが、子どもが主体となる災害復興を考えれば、子ども自身が環境に働きかけていく「復興のまちづくりへの子ども参加」や、子どもの環境を調整する「スクール・ソーシャル・ワーク」が注目される。 (b)インタビュー調査からは、東日本大震災の被災地域における子ども支援者が、支援の軸を見出していく過程と、その内実が明らかになりつつある。一方、乳幼児期の親が災害復興の主体となることについては、中越大震災の経験を生かした「平日昼間の避難訓練」などの取り組みが注目されるが、子どもの権利だけでなく、ジェンダー視点からの分析が必要であることがわかってきた。 以上を踏まえて、中間まとめとして、学会発表や論文投稿を計画通り実施した。論文は査読に通っており、研究目的の達成度はおおむね順調であるといえる。なお、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンへのインタビュー調査は、先方の協力もあり予定よりも早く第2期が終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
「次は必ずある」本研究を進めるにあたって、阪神淡路大震災、中越大震災、東日本大震災それぞれにかかわる人々から発せられた言葉である。災害大国日本にあっては、災害そのものが避けて通れないこと、だからこそ、過去の災害から学ばなければならないことを強く感じている。そのため、研究遂行に当たっては、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンをはじめとする調査協力者、一般財団法人地域創造基金みやぎ鈴木祐司常任理事や宮城県南三陸町中学校教員の三浦玲先生など研究協力者からの助言をもとに、被災地の現状と乖離しいない研究を心がけたい。 また、本研究は早稲田大学「人を対象とする研究」の倫理審査を経て実施している。引き続き、倫理基準に従って調査を実施する。 一方、本研究の申請時点では震災後間もないことから子ども自身へのインタビュー調査は想定していなかった。震災から2年が経過し、高校生世代を中心として子ども自身が発言を希望する例もでてきており、子どもへの調査の妥当性について、今後の課題としたい。 以上を踏まえて、初年度の研究が順調に進んでいることから、大幅な変更はせずに、災害復興期における子ども・子育て支援者の専門性を実証する研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用計画は以下のとおりである。 (a)文献研究:2012年度に国内における災害復興期の子ども・子育て支援について明らかにしたことを踏まえ、2013年度は、海外における災害復興時におけ子ども支援・子育て支援の動向を精査する。また、中越大震災後の災害復興に阪神淡路大震災の経験が活かされていることが多く見受けられたため、阪神淡路大震災に関する資料の収集も行う。文献の購入およびそのデータベース化にともなう備品、資料収集のための経費が必要である。 (b)インタビュー調査:子育て期の親支援に関しては、長岡市にて実施する。第2期インタビュー(春~夏)を長岡市における子育てと防災の複合拠点の建設プロセスとその現状について、第3期(秋~冬)をNPO法人になニーナを対象として市民参加による防災と子育て支援の融合について明らかにするために実施する。子ども支援に関しては、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンの復興支援スタッフを対象に、継続的に実施する。計画よりも早く第2期インタビューが終了してるため、予定よりも早く第3期(夏)を、また新たに第4期(秋~冬)を実施するが、対象は宮城県4~6名、岩手県2~4名である。調査のための旅費およびインタビュー文字おこしのためのRA費が必要になる。 (c)研究のまとめと公表:研究の成果は、適宜学会発表などを行うほか、一般にわかりやすいパンフレットの形にし、ホームページ上で公表する。パンフレットおよびホームページの作成にかかわる費用が必要である。
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Research Products
(5 results)