2013 Fiscal Year Research-status Report
現代の貧困問題に取り組む幼年期リテラシー教育と学校システムのモデル化
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24730677
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
竹川 慎哉 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30513311)
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Keywords | ナショナル・カリキュラム / 就学前教育 |
Research Abstract |
25年度では、オーストラリアにおける幼年期リテラシー教育の理論、教育課程政策、実践事例を検討することを課題とした。現地との日程調整が折り合わず、現地調査は26年度に回さざるを得なくなったが、教育課程政策の動向については明らかにすることができた。 現在オーストラリアでは、ナショナル・カリキュラムが策定され、初等・中等教育に責任を持つ各州・地域で順次、実施の準備が進められている。そのカリキュラム内容のベースとなっている能力観に焦点を当て政治学的、教育学的な分析を行った。その結果、政治的には、それは、オーストラリア社会が従来国是としていた多文化主義の変容の一過程としてとらえられることが明らかとなった。すなわち、国内の政治的、文化的統合システムとしての多文化主義をグローバリゼーション(この場合、A. Giddensなどが主張する、いわゆる「第三の路線」)へと転回しようとする動きである。教育的には、OECDのDeSeCoプロジェクトのキー・コンピテンシーやPISAのリテラシー概念を積極的に取り入れようとする動きである一方、学校カリキュラムに対するアカウンタビリティ・システムの中に取り込まれる中で、学校・教師の側では「いかに平均より上のスコアを達成するか」が中心的な関心となり、とりわけ社会経済的、文化的に周辺部に追いやられている子どもたちにとって社会に批判的に参加する学力形成を後退させる結果になっていることが明らかになった。 また、こうした動きの中で、就学前教育においても(上記のような意味での)小学校における学習を準備することが教育活動の中で求められはじめていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度に予定していたオーストラリアでの学校訪問・実践調査が実施できなかったため、政策動向の中で学校・教師の実践がどのように変容を迫られているのかを実際に即して検討できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、25年度に実施できなかったオーストラリアでの調査を8月下旬に実施する。また、本研究申請時の計画として、26年度は研究総括の年度であることから、国際学会での発表とジャーナルへの投稿を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたオーストラリアでの現地調査の日程が訪問先と折り合いが付かず、延期せざるを得なくなった。 25年度使用できなかった予算については、26年度の8月下旬に現地調査をすることで予定していた予算(旅費)を使用する。 26年度配分の予算については、研究成果のまとめを発表する国内外学会での発表のための旅費が大半となる。また、国際ジャーナルへの投稿論文作成のため、専門業者への英文校正の費用を計上する。
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