2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730678
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂本 実歩子 (伊藤実歩子) 立教大学, 文学部, 准教授 (30411846)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ドイツ語圏の教育 / PISA / コンピテンシー / Bildung / PISA型教育改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
PISAが開始されて15年以上が経過した。この平成27年度の研究においては、コンピテンシーに基づく教育改革への批判的検討を、以下の3点の視点から主に行った。 ①PISAへの適応と加速化/PISA調査の結果に強く影響を受け、そこで指摘された問題をカリキュラムや教育制度の改革などによって改善することに一層取り組んでいる状態、その国や地域の状況を「PISA型教育改革」と呼ぶことにした。本研究においては、「PISA型教育改革」の詳細を、ドイツ・オーストリア・スイスのカリキュラム改革や統計調査の不備などに焦点を当てて検討した。そこでは、2000年代(仮に第1期とする)よりも2010年代(同じく、第2期とする)において、PISAの影響がより強化され、PISAあるいはOECDが求める教育のあり方への適応と加速化が、カリキュラムやテストの増加などによって認められた。 ②「教育と知識学会」の設立/さらに、その第2期に入った2010年に「PISA型教育改革」を批判するために「教育と知識学会」(Gesellschaft fuer Bildung und Wissen, 以下、GBWと略称)が、ドイツ語圏の教育学者たちが中心となって設立されたことに本研究では着目した。このような動きを見ると、日本におけるPISAを一連とした諸改革への批判的な動向は非常に弱いと言わざるを得ない。 ③変容するBildung/PISA開始以降、ドイツ語圏の教育はその伝統的な概念である「Bildung」をゆさぶられてきた。この点については、Bildung概念の変容を歴史的に概観したうえで、この概念のあいまいさや、Bildungと「PISA型教育改革」は共存可能であるか否かなどについて検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、主にPISA型教育改革の是非に関する理論研究に従事した。日本において弱いと言わざるを得ないPISA型教育改革に対する批判的な研究動向を確認することができた。また、ドイツ語圏の教育に伝統的に存在してきたBildung概念の変容の史的展開やBildungを主張する論者とコンピテンシーによる教育を主張する論者の相違などを検討した。ただし、育児中のため、また年度途中からの妊娠期間のため、海外での現地調査などは不可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は出産・育児休業を取得するため、研究を中断する。 休業後には研究を再開し、海外での現地調査や学会参加を精力的に行っていきたい。とりわけ、PISAによって新たに持ち込まれた教育評価(統一的なテストの導入)の文化を、理論と実践ともに研究していきたい。
|
Causes of Carryover |
当該年度中に妊娠が判明したため、海外での現地調査などが不可能になったため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は育児休業を取得し、研究を中断するため、平成29年度以降に海外調査などを含め、計画的に使用したい。
|
Research Products
(3 results)