2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of Educatinal Assessment in German-speaking countries
Project/Area Number |
24730678
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂本 実歩子 (伊藤実歩子) 立教大学, 文学部, 教授 (30411846)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教育評価 / コンピテンシー / アビトゥア / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、最終年度として、ドイツ語圏における教育と評価に関する総合的考察を行った。その成果は、以下の通りである。 第一に、ドイツ語圏の教育評価における能力観の歴史的検討である。1960年代の能力論に端を発するドイツ語圏の学力/能力(Leistung)概念が、PISA調査の前後からコンピテンシーにとってかわられることに着目した。1960年代のドイツを代表する教育学者であったクラフキと、教育心理学者であったインゲンカンプらのLeistung概念を検討したうえで、それは能力の要素化、数値化を主張するコンピテンシーを新たな能力概念とする心理学的な文脈から批判されていることを指摘した。 第二に、ドイツ語圏の教育において重要な概念であるBildung(陶冶や人間形成と訳される)が、理念的には相対する「評価」という、しかし教育の営みにおいては欠くことのできない、またPISA以降とりわけ重要とされる領域が、いかに共存してきたのか、あるいはどのような問題を含むのかといった点から検討した。 第三にBildung(同上)概念とアビトゥアと呼ばれる後期中等教育修了資格試験(アビトゥア)を検討し、PISA以降のBildung概念の多様化、アビトゥア制度の現行の問題点を明らかにした。ドイツのアビトゥアの問題は日本の大学入試と共通の問題を有している。高大接続は教育における大きな問題であり、教育評価の領域において最も制度的で、最も改革困難だと考えられる。 本研究期間を通して、ドイツ語圏で浸透しつつあるコンピテンシーに基づく教育とその評価に関して、批判的検討を行った。その結果、教育の成果を数値化することによって、教育学の重要概念であるBildungの多様化、教育の心理学化の問題、そしてそれが高大接続改革にまで及んでいることを指摘することができた。
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Research Products
(4 results)