2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦前・戦中の女子社会教育政策の変容~「成人教育婦人講座」から「母の講座」へ~
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24730690
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
森岡 伸枝 大阪芸術大学短期大学部, その他部局等, 講師 (20448187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 母の講座 / 日中戦争 / 母親 / 社会教育 / 奈良女子高等師範学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は12月5日(土)に幼児教育史学会第 11 回大会(於福山市立大学)において口頭発表を行った。その際、発表題目を「戦時下における文部省主催『母の講座』 ―奈良女子高等師範学校に着目して―」とした。ここでは、戦争が与えた母親への社会教育の影響をみることをテーマとし、日中戦争開始前後の時期に注目した。ここで、明らかとなったことは、本講座をめぐる文部省と地方の解釈の違いである。 文部省は母親を主な対象とした「母の講座」の開催を各地方へ委嘱し、家庭を「皇国の子」を育てる場所とみなし、講座科目を「国史」や「日本精神」としていた。その一方で、委嘱先の一つであった奈良女子高等師範学校では「母又は妻、其の他特志の婦人」を対象として母親に特化することを避けていた面がみられた。例えば、それは講座科目に表れており、母親育成を強調した講座科目とせず、文部省が指示した「国史」といった科目を置かない時期があったのである。その背景には、本校は「母の講座」開催以前に、前身である「成人教育婦人講座」において、受講者の定員割れが続いたという経験をしたことが考えられる。つまり、本校は「母の講座」の対象を家事や育児に忙殺される母とすると講座運営がさらに難しくなることを予知していたのではないだろうか。そして、講義内容を受講者の実生活のニーズに沿うように考えていたと思われる。 以上のことから、先行研究での解釈に新たな一面を加えることができた。すなわち先行研究で語られてきたように「母の講座」が受講者のニーズを反映できなかったというわけではなく、むしろか開催者側は講座運営のために婦人一般に合致する社会教育講座の在り方を模索していたと考えられたのである。
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Research Products
(1 results)