2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730698
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
古田 和久 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70571264)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会階層 / 学校適応 / PISA / 高校生調査 |
Research Abstract |
本研究の目的は,OECDが2000年から実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」などの既存の社会調査データを活用し,社会階層や学校構造による教育格差の実態とその生成メカニズムを検討することである。初年度である平成24年度の研究計画は,(1)PISAデータを用いた国内外の先行研究の収集・整理,(2)PISAの日本データの分析,(3)世界の教育制度の検討であった。 こうした計画のもと,(1)~(3)を継続的に進めた。具体的には,PISAデータと高校3年生を対象として実施している調査(「高校生の進路と生活に関する調査」)の分析を通して,高校生の日常的な意識や行動について検討した。まず,PISA2003年調査のデータを用いて,日本の高校生の学校適応について検討した。その結果,高校生の学校適応は出身階層や学校ランクだけでなく,学校の出身階層多様性が生徒の意識や行動に影響していることなどが分かった。この分析結果については,論文を執筆し報告した。さらに,日本の教育制度に即した問題をより深く検討するため,兵庫県で継続的に実施している高校生調査のデータを分析する機会を得た。具体的には,高校生の進路に関する意識を,近年利用者が急増している奨学金利用に絡めて検討した。その結果,奨学金の利用を希望する生徒と,利用を希望しない生徒の間で,進路選択の動機構造があまり異ならないことなどが明らかになった。この結果は日本教育社会学会で報告し,論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会での報告やそれを踏まえたうえでの論文執筆などを行っており,概ね当初の計画通り進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
PISAデータを用いた学校適応に関する研究は,1年目から継続的に行ってきた。その研究過程において,ジェンダーと教育研究につながる興味深い結果も発見することができた。今後は,PISAデータの国際比較分析に本格的に取り掛かるとともに,日本の高校生を対象とした調査の分析を組み合わせることにより,日本社会の特徴を描くことを目指す。具体的方策として次のものがある。 (1)日本データの追加分析。PISAの日本データや高校生調査の分析を通して,これまでに得た知見の深化を図る。 (2)日韓の比較分析。まず日本と類似した特徴を持った韓国との比較を想定している。先行研究からは,欧米と比べれば比較的類似した特徴を持つとされる韓国との比較においても,日本との共通性と異質性が観察されることが予想される。そこで,日常的な意識や行動傾向の異同に,それぞれの国の教育政策はどのように影響しているか,あるいは出身階層や学校の影響は日韓で異なっているかどうか,などを主題として分析する。 (3)国際比較分析。上記の日韓比較を手始めとして,分析する国の数を増やしていく。先行研究等を参考に教育制度や社会的背景が特徴的な国の調査データを用いることを想定している。これらの分析を通して,欧米諸国と東アジア諸国の比較などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り,教育と社会階層関連の文献の購入および学会報告のために研究費を使用する。またこれも計画通りだが,初年度の検討をベースに,より洗練された統計分析を行うために,統計分析用のソフトウェアを購入する。
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Research Products
(3 results)