2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730698
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
古田 和久 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70571264)
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Keywords | 社会階層 / 学校適応 / ジェンダー / 教育期待 |
Research Abstract |
本研究の目的は,OECDが2000年から実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」をはじめとした既存の社会調査データを活用し,社会階層や学校構造による教育格差の実態とその生成メカニズムを検討することであった。今年度の成果は次のようなものである。 まず社会階層による教育格差に関する国内外の研究を系統的にレビューし,この分野の到達点と今後の課題に関する論文を執筆した。 次に,PISA2003と2006年の2時点のデータを用いて,生徒の学校適応を学業面から検証した。具体的には,学業的自己概念が生徒の個人属性や学校環境によってどのように異なるかを調べ,とりわけジェンダー差に着目して議論した。その結果,学力水準が同じでも女子の数学的自己概念が低いことなどが明らかとなった。日本教育社会学会で分析結果を報告し,論文を執筆中である。 日本の現状に即した問題をより深く検討するため,高校生を対象とした2つのデータを分析した。1つは兵庫県で高校3年生を対象に継続的に実施している「高校生の進路と生活に関する調査」である。このデータを用いて,高校生の進路を近年利用者が急増している奨学金利用に絡めて分析し,高校生の進学行動や意識の特徴を検討した。もう1つは全国レベルで高校2年生を対象に実施された「高校生と母親調査,2012」である。このデータから高校生の学校経験と進路希望との関係を分析し,最近では学校適応が低いにもかかわらず大学進学を希望する生徒が一定程度確認されること,そこには母親の進路希望も関連していることなどを明らかにした。これらの2つのデータと用いた検討について,論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会での報告やそれを踏まえたうえでの論文執筆などを行っており,概ね当初の計画通り進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでPISAデータを用いた学校適応に関する研究や,日本の高校生を対象とした複数の調査データの分析を継続的に行ってきた。今後はこれらの知見や分析を各国のデータに当てはめ,国際比較分析から日本社会の特徴を描くことが中心的課題となる。具体的には,出身階層や学校の特徴によって生徒の日常的な意識や行動がどのように異なるかを分析する。そうした分析を国別に行い,各国のデータから得られた傾向の異同を教育制度や社会的背景の観点から読み解くことが中心となる。さらに,最新のデータ(PISA2012)を用い,過去のデータから得られた知見に変化が生じているかどうかも検討課題となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張を想定していたが,今年度はできなかったため,使用額に差が生じた。 学会への報告,参加また追加的な文献が必要となったので,これらの購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)