2013 Fiscal Year Research-status Report
移行過程におけるニューカマーの若者たちの学習経験とその教育的支援の展開論理
Project/Area Number |
24730701
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
杉山 晋平 福井大学, 教育学研究科(研究院), 特命助教 (30611769)
|
Keywords | ニューカマーの若者たち / 移行過程 / 学校教育 / 支援者の力量形成 / 文化的多様性 / 学習論 / 協働実践研究 |
Research Abstract |
本研究は、高校教育から就労・進学へと向かっていくニューカマーの若者たちに注目し、その移行過程の客観的形成と日本で生きていくことの意味を培う主観的経験との相互作用を分析し、多様な言語的・文化的背景をもつ若者たちに固有の学習経験の性質を明らかにしていくことを目的とする。本年度も、下記の4つの柱を軸に研究を進めた。 (1)基礎研究:特に国内の先行研究の収集・整理を進め、戦略的本質主義に注目し、その到達点と課題(持続可能性・組織的展開)を検討した。 (2)聞き取り調査:既卒・中退者への追跡調査を継続し、ニューカマーの若者たちの移行局面における困難の実態及び教育的支援のあり方について検討を進めた。卒業・中退後の語りについては、対象者の現状によって微細に変化していたが、在学時からのインフォーマル・ネットワーク(仲間集団、教職員等との個別的な関係性、家族、エスニック・コミュニティ)が持続的に機能しているかどうかがキャリア・トラックにおけるその後の「選択」に強く影響していることが確認された。また、インフォーマル・ネットワークが薄い場合、その補完が望まれる公的支援サービスの活用がスティグマとして逆に敬遠されているケースも確認された。 (3)実践調査:独創的な学校教育実践を対象としてフィールドリサーチを進め、生徒たちの主体的なプロジェクト活動とそれを支える教師・支援者側の力量形成プロセスとの相互作用に焦点をあててデータ整理・分析を進めた。 (4)協働実践研究:学校関係者・教育委員会との連携の下、定期的なケース・カンファレンスをラウンドテーブル形式で実施した。特に、分野・地域・世代をこえて教師・支援者自身が省察的実践を重ねていくプロセスが、教育実践における学習の多様性を拡げていくという可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、国内3地域を調査対象として研究を進める予定であったが、卒業・中退者の特定地域をこえた居住地の移動が複数ケースにわたって生じたため、地域間の比較分析について分析枠組みの検討を含めやや遅れが生じている。基礎研究、主要調査拠点となる札幌市でのフィールドリサーチ及びカンファレンス形式での協働研究は概ね予定どおりに進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、地域間の比較分析から卒業・中退者への追跡調査へ比重をシフトさせながら、調査対象となる3地域の位置づけに軽重をつける。実践調査の拠点を札幌とし、他の地域からはカンファレンス形式での研究協力を仰ぎ、地域間の実践交流、分析への助言、協働研究の組織化を進め、研究目的の達成を図る。 研究成果の発表については、国際学会での共同発表に加え、申請者の勤務する福井大学教職大学院が主催する「実践研究福井ラウンドテーブル」での実践的な研究成果の発表を引き続き重ねる。さらに調査対象となった地域でも実践研究ラウンドテーブルの方法論で研究成果の実践的発信・共有に努める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は18,780円の残額が生じた。これは、研究成果発表を協力者との共同発表へ変更したことにともなうにともなう海外旅費の繰り越し、それにともなう人件費・謝金の削除、国内先行研究の収集に要する物品費の増加といった変動によるものである。 平成26年度は、当初の計画にしたがって研究成果の発信を含めた旅費・印刷費等を中心に使用する。
|