2013 Fiscal Year Research-status Report
バングラデシュ農村部で拡充された学校教育制度と職業の接続に関する研究
Project/Area Number |
24730703
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
日下部 達哉 広島大学, 教育開発国際協力研究センター, 准教授 (70534072)
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Keywords | 教育と職業接続 / バングラデシュ農村 / 教育制度拡充 |
Research Abstract |
本研究では、「バングラデシュ農村部で拡充された学校教育制度と職業の接続の関係性」を、約10年前と全く同じ標本世帯、教育機 関、教育行政機関などを追跡調査することによって、10年前のバングラデシュ農村で、受容されはじめた学校教育制度が、次の進路形 成のために機能しているのか、特に中等教育または高等教育を卒業したあと、教育をうけたにふさわしい就業機会が得られているのか、農村住民がそのことについて有している学校教育に対する意見、願望、期待なども合わせて調査することを三年間の計画の骨子とし ている。 調査すべき村は、国内各地に4つ存在するが、二年度目にあたる平成25年は、バングラデシュ東部に位置する近郊農村チッタゴン県のゴヒラ村を調査した。この村は産業経済の影響を受けやすい土地柄であるとともに、4農村中比較的充実した設備を持ち、かつ 政府の支援を受けない「非正規」のマドラサが大小ともに多数ある。大まかな分析では、村人達は、一九六〇年代から子どもを学校やマドラサに行かせるようになっており、ほぼ村民皆学の状況がつくられていた。この背景には近くにある都市経済に誘引されるとともに、チッタゴンにある製造業の労働力を求める、いわゆるプル要因も働いている。ただ、それも全ての人々が、給与所得を得られる職につけるわけではなく、ある場合には中等学校に進んだ子ども世代は、何らかの仕事に就こうとするものの、職業市場は依然として厳しく、農村部雑業層に就かざるを得ない状況もあった。しかし、一方で、国内外への出稼ぎの数も増加 していた。ここではつまり、村人の学歴は上がり、職歴との「接続」や「連続性」が一定程度認められた。本研究内容は、第49回日本比較教育学会(上智大学)及び第15回世界比較教育学会(ブエノスアイレス)において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的は、①10年前に学校に通っていた子ども世代が、現在どのような学歴あるいは職業を有しているか、またそれは、農村部 の人々が納得できるようなものか。②親の子どもに対する、将来におけるビジョンの在り方の、ここ10年間の変化。③教育の供給側で ある学校や教育行政担当者のインタビューによる、10年間の政策的変遷とその政策意図を明らかにすると同時に、初等・中等教育レベ ルのあり方の多様性に着目し、中等職業教育、女子教育の拡充が、工場労働者、またホワイトカラー人材の輩出を増幅させているのか の検証。④マドラサを分析の範疇に入れることで、モスクやマジャル(聖者の墓)の管理人、マドラサ教師など、宗教関係職にもスポ ットを当て、イスラーム国家であるバングラデシュで、決して小さくはない「宗教関係職と教育制度」の結びつきにも言及する。⑤以 上①②③④の総合的分析から導出される、「学校教育制度がバングラデシュの多様な地域性の中で、人的資本育成に貢献しているのか 」の詳細な分析を4農村の多様性に基づき行う。という5つである。具体的には、これらの目的に向け、4農村を調査する必要がある。申請時に一つ目の農村であるカラムディ村の調査は終了、初年度においては二つ目のソイダバッド村、予定では、25年度終了時点で3つの村の調査を終えている必要があった。国内情勢の変化に鑑み、調査対象村を24年度に行った村と入れ替えたが、予定していたフィールドワークを無事に実施し、当初の予定通り、二農村の調査が終了した。これは順調な進捗だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最初に、25年度の成果をまとめ第50回日本比較教育学会における発表を行う。ここでは、イスラーム教育や国際教育協力の専門家が集うため、より専門的な指摘を受けることによって研究を深化させる目的をもって参加する。次に、3農村における研究データを整理して、バングラデシュ、ダッカ大学の教授と研究内容を一緒に検討してもらう。 最後に、残り一つの農村であるラジシャヒ県カタルバリア村のフィールドワークを8-9月または2-3月にかけて行う。この村は、近郊に位置付き、都市経済の影響をよく受けている村である。調査には前年度同様、従来と同じ質問項目からなる村センサス調査票を用いる。 最終的には、比較の作業を行い、単著『バングラデシュの社会変動と教育』の執筆にかかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ分析を年度中に行わなかったので、その際の人件費を繰り越している。 今年度、昨年度中に行わなかったデータ入力を行う予定としており、その際の謝金として執行予定である。
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Research Products
(7 results)