2012 Fiscal Year Research-status Report
フィンランドにおける乳児期からの多文化保育モデルの研究
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24730715
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
三井 真紀 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 講師 (80342252)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多文化保育 / フィンランド / 乳児 / 保育カリキュラム / 保育プログラム |
Research Abstract |
研究の目的は、フィンランドの乳幼児をとりまく多文化保育の現状と課題を、保育現場という空間を通して分析することである。 本採択課題では、フィンランドに存在する、0歳からの多文化保育プログラムを切り口に、乳児期からの多文化保育の方向性について考察することを目的としている。 24年度は、主として過去のデータ分析および文献研究に重点をおいた。ここまでに、ヘルシンキ中心部の多くの保育所で、0歳からの多文化理解に着目し、固有の非言語コミュニケーションを意識した独自のカリキュラムの持つ傾向が明らかになった。 現在、文化獲得は生後3,4 ヵ月から活発に始まっていると考えられている。世界の教育現場の多くが、就学時(小学校)からの多文化教育を進めている現状および先行研究の多くが乳幼児期からの積極的な多様性理解の議論には至っていないことを考慮すると、今後もフィンランドに注目する意義は大いにあると考えられた。 フィンランドの保育現場におけるカリキュラムの視点を読み解くことは、保育空間に頻繁に見られる「文化獲得」や「文化的支配関係」の出現についても、より明確に分析できるであろう。したがって、次年度以降は、フィンランドの多文化保育モデルについて行政の意図やプログラム開発の観点からも検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次年度からの現地調査のための準備期間としておおむね順調に進展したといえる。 フィールドワーク準備段階における事情により渡航こそできなかったが、現地研究者、保育所や小学校のスタッフらとの関係は友好的に機能しており、研究に効果的であった。具体的には、Eメールや書簡などを通じて今後の展望について話し合い、新しいアイデアも生まれている。インタビュー協力者へのフォローアップインタビューも順調である。 また、調査者自身の過去の研究データの整理や、先行研究の批判的読解を通し、北欧型の多文化保育に関するモデルの見通しが持てた。最新かつ有効な情報の収集は予想通り順調に実施した。 現在、現地滞在におけるフィールドワークの計画を再検討しており、ヘルシンキ(近郊地域含)における、資料収集、参与観察、インタビュー調査、アンケート調査等を実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果をもとに、次年度以降は、主としてヘルシンキおよび近郊地域におけるフィールドワークを実施する。 第一に、現地の最新の資料収集をし、制度上の変革を再調査することが目的である。 第二に、国の多文化保育プログラムの開発に携わる研究者の協力のもと、保育者、為政者、市の担当職員、乳幼児の家族らにインタビュー調査を実施する計画である。さらに、ヘルシンキ大学もしくは関係機関の多文化保育にかかわる研究会に参加し、日本およびフィンランドの現状の課題を情報交換、討論したい。 現在、フィンランドの移民・難民受け入れは顕著であり、保育環境の対策についても最新のモデルケースとして分析するにふさわしいと考えられる。保育現場における多文化化が急速に進む日本の現状には、現地の研究者も注目しているため、今後も継続的な現地滞在型の調査を実施予定である。 本分野においては、今後は保育に精通しながら学術的な裏付けを持つ多文化研究が必要であることから、現地調査をベースにした本研究によって、これらの空白領域を埋められるような新しい視点を導入したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主としてヘルシンキおよび近郊地域によるフィールドワークを計画している。研究費の多くは、渡航、滞在に活用予定である。 従来、多文化教育を取り上げる際、イギリスやカナダのプログラムを取り上げ、分析する研究が主流で、北欧を取り上げることは少なかった。しかし、現在の北欧の移民・難民受け入れは顕著であり、その対策やプログラムは、最新のモデルケースとして分析するにふさわしい。したがって、現地滞在型のフィールドワークを実施することで、現地の状況をきめ細かく分析し考察する必要性がある。 また、保育所や幼稚園等に見られる固有の空間を分析し読み解く場合、長期的な関係構築をベースにした参与観察が必要である。さらに、乳幼児の生活の場を対象とした調査であることから、利用家族への倫理的配慮は不可欠で、信頼獲得が重要となる。したがって、長期滞在(または短期間の滞在を複数回)を実施することが、研究対象者に配慮し長期的な見通しのある研究に発展する見込みが持てる唯一の方法である。 フィンランドにおける長期間にわたる保育所フィールドワークは、日本では未だ実施されていないことから、今後の北欧の保育研究の先駆けとなるような現地調査の方法についても開拓することを目指したい。
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