2013 Fiscal Year Research-status Report
フィンランドにおける乳児期からの多文化保育モデルの研究
Project/Area Number |
24730715
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Research Institution | Kyushu Lutheran College |
Principal Investigator |
三井 真紀 九州ルーテル学院大学, 人文学部, 講師 (80342252)
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Keywords | 多文化保育 / フィンランド / 乳児 / カリキュラム / プログラム / 家族支援 / 移民 / 難民 |
Research Abstract |
研究の目的は、フィンランドの乳幼児をとりまく多文化保育の現状と課題を、保育現場という空間を通して分析することである。本採択課題では、フィンランドに存在する多文化保育政策を中心に、乳児期からの多文化保育の方向性を社会学的視座から探ることを目指す。 平成24年度の調査では、保育空間の独自性に着目した過去の研究の蓄積が、世界的にも少ないことが明らかになった。また、フィンランドにおける報告者の過去のデータ分析やフォローアップインタビューにより、フィンランドの保育空間における多文化型(モデル)の構築について検討した。 平成25年度は、それを受け、フィンランドにおけるフィールドワークを実施した。調査では、現地の乳幼児を育てる移民家族宅へ訪問しインタビューを実施したほか、保育所における参与観察、保育者・保護者へのインタビュー、6歳児学級(エシコウル)に関する為政者への聞き取り、移民センターにおける家族支援イベントへの参画、小学校一年次の移民特別クラスの参与観察など、多角的にデータを収集・分析し、ヘルシンキを中心とした都市部における、0歳からの多文化保育支援と現状把握に努めた。また、ヘルシンキ大学の研究者による、新しい保育支援策について情報を得た。研究責任者との研究交流の中で、移民・難民の増加に伴う福祉政策との関連性が重視されていること、新たな家族支援の課題について最新かつ一定の情報を得た。 次年度はこれらのデータをもとに、フィンランドの保育現場におけるカリキュラム作成の視点を読み解き、多文化保育環境における「フィンランド・モデル」を提案し、その特色について議論したい。その中で、0歳からの「文化獲得」や「文化的支配関係」の出現についても考察する。フィンランドの保育行政の意図やプログラム開発の観点にも着目し、フィンランドを通した、北欧型多文化保育の可能性について考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、フィンランドにおける現地調査期間が一定期間確保でき(約4週間)、研究初期段階での計画を上回るインタビューや参与観察によるデータが収集できた。準備期間を十分にとるなかで、現地スタッフや研究者との関係を保てたことも、研究に効果的であったと考えている。また、調査以外の期間では、Eメールや書簡などによるフォローアップインタビューや研究情報の交換も順調に進めることができている。 日本において多文化保育・教育への関心も高まる中で、研究成果を書籍として出版することも実現した。現在、最終段階のフォローアップ調査の計画を立てている。また、8月に開催されるEARLI conference 2014 Helsinki において研究成果発表が決定し、準備も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、乳児期からの多文化保育モデルについて、本研究の成果をまとめ、フィンランドの多文化保育モデルについて最終的な考察の段階に入る。研究データの分析と平行し、9月に最終段階のフォローアップ調査を実施計画である。目的は、第一に、これまでの研究成果について討論し、現地の研究者や為政者らと今後の課題について意見交換を行うためである。第二に、多文化保育プログラムやカリキュラムの最新情報を把握し今後の研究活動の方向性や本研究の役割について考察するためである。 また、8月に開催される「EARLI conference 2014 Helsinki」 において研究成果発表(ポスター発表)を行う。これらの保育現場におけるフィンランドの多文化保育モデルについて一定かつ最新の情報を発表するとともに、日本における多文化保育の方向性について紹介する予定である。
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