2013 Fiscal Year Research-status Report
栽培教育の現状と課題に関する基礎的研究:学校園の地力改善をめざして
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24730724
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
荒木 祐二 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00533986)
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Keywords | 栽培学習 / 土壌改善 / 基肥量 / 堆肥 |
Research Abstract |
本年度は,堆肥(アドニス)の最適施肥量を明らかにし,土壌環境に目を向ける学習を提案することを念頭に研究を進めた。 埼玉大学教育学部大久保農場の一角に建設発生土を敷きつめ,教育現場にみられる開墾直後の圃場に見立てた。ここに堆肥(アドニス)の基肥量の異なる7条件の区画を設置し,サツマイモの苗を4株ずつ定植した。各区画でサツマイモと雑草の植被率をおよそ1週間ごとに測定し,各区画における雑草種組成の変遷を解析した。また,各区画の地表面温度や土壌硬度,土壌水分を測定し,50gを彩土して自然乾燥させた後,土壌成分を測定した。収穫時にはサツマイモの生重量,長さ,直径を計測し,外観上の品質を評価した。その結果,開墾直後の圃場においては,埼玉県のサツマイモ施肥基準の2倍の1.4kg/m2が堆肥を基肥するのに適量であり,雑草の生育を抑えるとともに,サツマイモの地上部の成長および塊根の肥大を促すことが示された。この施肥量より少ない場合は,雑草の繁茂は抑えられるものの,収量は少なく品質も劣っていた。逆に施肥量が多いと,植付けしてから2カ月で雑草がサツマイモを被陰するようになり,減収を招くことが明らかになった。 また,土壌間にみられる物理化学性の変動特性を明らかにするため,異なる土壌条件間で作物の成長過程と土壌成分の時間変化をモニタリングし,土壌間にみられる変動特性の差異を検討した。土壌には,培養土と赤土,黒土,砂利を各5セット用意した。その結果,土壌の腐植率が培養土で定植時から収穫時にかけて有意に減少すること,地表面温度は,砂利と培養土がどの時点でも黒土や赤土の温度と5℃ほど高くなること,土壌硬度は,黒土が常にもっとも硬く,サツマイモの塊茎が成長するにつれて土が軟らかくなる傾向が認められること,土壌水分は,黒土が比較的乾きやすく,特に8月下旬から9月下旬にかけてその傾向が顕著であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
堆肥(アドニス)の最適施肥量を予定どおり明らかにできた。基準値の2倍の基肥量が最適であるという知見は,教育現場で開墾した直後の学校園の土壌改善に大きく寄与する。同時に,雑草の繁茂を抑制し,サツマイモの収量を最大にすることが示され,栽培学習で最適な施肥方法について指導するための貴重なデータが得られた。また,土壌に目を向ける学習を提案するために,土壌の物理化学性の動態調査を実施し,その成果が得られたことにより本研究課題の発展の方向性が定められたといえる。加えて,研究成果を公開するためのホームページを開設した。研究結果を論文化するまではデータの公表は控えたいが,順次,情報を発信する予定である。 一方で,計画していた協力校の学校園における堆肥の実験は行えなかった。これは,上述の結果が明らかになったのが12月であり,そこからでは作物の栽培が困難であったことによる。それでもいくつかの学校には堆肥(アドニス)を配布し,実用的な活用を始めてもらっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施した調査により,堆肥(アドニス)の最適基肥量が基準値の2倍であることが示された。今後はこの基肥量を継続的に与えることが可能であるか検証する必要がある。そこで,昨年度に引き続き,開墾して一年目の作付けを終えた圃場においても,同量の基肥量が最適であるかモニタリングを続ける。また,学校園の円滑な活用法について引き続き検討するとともに,土壌環境に目を向ける栽培学習の指導法についても具体的に提案する。 今年度は本研究課題の最終年度として,昨年度までの研究成果を論文等で発表するとともに,土壌改善の手法と栽培学習の指導例に関する情報をホームページならびにパンフレットを作成して発信することで栽培学習の啓発活動につとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査中に土壌サンプリングできない時期があり,サンプル数が予定よりも減ったため,試薬代分が残された。 研究成果を公開するためのパンフレット作成費として補填する。
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