2012 Fiscal Year Research-status Report
数学的リテラシー育成のためのカリキュラム開発に向けた基礎的研究
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24730728
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 好貴 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40624630)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 数学的リテラシー |
Research Abstract |
本科研の目的は,数学的リテラシーの育成という視座から,主として算数・数学科における「関数」に関わる領域に着目し,現行カリキュラムの目標・内容・方法に関する課題を同定し,その課題解決に向けた方策を探ることである。初年度となる平成24年度は,数学的リテラシーという視点から,数学教育のカリキュラムの内容を批判的に考察し,関数領域そしてその他の領域との関わり方を考察することを中心に研究を行った。また,本研究のキー・コンセプトである「数学的リテラシー」の捉え方について,フランスの数学教授学者Chevallarardの論考をもとに考察し,数学的リテラシーという概念そのものについても,改めて考察をおこなった。 これらの研究は,個人研究を中心におこなったが,その一方で研究協力者(小学校・中学校教員・大学院生)と研究会合を開き議論したり,他大学の専門家に助言を求めるなどし,研究の進展を目指した。また,附属中学校において関数の実践を観察し,授業の分析をおこなっている。 研究の成果として,代数・幾何領域という数学の構造的探究の側面が強い領域と,統計などの現実世界との関わりが強い領域との接続をおこなう上で重要であること,そして,現状では関数領域は構造的探究の側面が強く,応用的な側面が弱いことが明確になった。また,数学的リテラシーは「活用力」といった矮小化された捉え方がなされうるが,このような数学的リテラシーの捉え方を批判的に考察し,数学教育の目的・目標を改めて議論する必要性をまとめた。本年度は雑誌論文を1編まとめ,また学会発表を2回おこない,これまでの研究成果をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研は,2年間の研究プロセスを3段階で計画しており,初年度となる平成24年度は,「第1段階:数学的リテラシーという視座からの関数領域のあり方の考察」,「第2 段階:関数領域の課題の同定」を計画していた。この研究計画に対して,個人研究,研究協力者(小学校・中学校教員・大学院生)との研究会合,附属学校における授業観察・分析をおこなうことで,研究をおこなった。また,研究の進行状況に応じて,数学的リテラシー研究の専門家に助言を求めることもおこなった。 第1段階の研究成果として, 数学的リテラシーの捉え方を再考し,カリキュラムの内容領域の関係を明確にした「数学的リテラシーの捉え方に関する一考察:Chevallardの論考から」を標題とする論考を,日本数学教育学会誌『第45回数学教育論文発表会論文集』に論文として投稿し受理されている。また,第2段階の研究成果として,数学的リテラシーという視点から,関数領域の課題を明確にした「数学的リテラシーという視点からみた関数領域のあり方に関する基礎的研究:関数領域の単元構成上の課題に着目して」を標題とする論考を,全国数学教育学会第36回研究発表会にて口頭発表している。さらに,主として第1段階に関わる数学的リテラシーの捉え方を,応用数学という視点から考察した「数学的リテラシーの捉え方に関する基礎的研究:「文化的手ほどき」としての数学的リテラシー」を標題とする論考を,全国数学教育学会第37回研究発表会にて口頭発表している。 以上のように,研究計画に示した研究プロセスの第1段階および第2段階は概ね計画通り進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究計画の最終段階として,「第3 段階:カリキュラム構成原理の構築」をおこなう。これまでに同定した課題を解決するための方策として,関数領域における数学的リテラシー育成のためのカリキュラム構成原理を構築する。そのための研究方法として,個人研究を中心としながら,研究協力者(小学校・中学校教員・大学院生)との研究会合,附属学校での授業実践・観察によって,原理構築においては理論的に,その検討において実践的に研究をおこなう。また,研究の進行状況に応じて,数学的リテラシー研究の専門家に助言を求めることも考えている。研究の成果は国内の学会で発表し,2年間の研究成果をまとめて,学会誌に論文を投稿することを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の成果を国内の学会で発表するための旅費として,そして,数学的リテラシー研究の専門家の助言をいただくことを目的とする研究打合わせのための旅費として研究費を活用したいと考えている。また,理論的考察をおこなうための研究関連書籍等の購入に対して研究費を活用したいと考えている。
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