2013 Fiscal Year Research-status Report
数学学習における証明と論駁の活動を捉える枠組みの構築
Project/Area Number |
24730730
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 孝太郎 信州大学, 教育学部, 准教授 (40578267)
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Keywords | 数学教育 / 証明 / 論駁 / 反例 / ラカトシュ / 発見法的規則 / 演繹的推量による内容の増加 |
Research Abstract |
本研究では,数学学習における証明と論駁の活動を捉える枠組みを構築することを目的としている。そのために,数理哲学者ラカトシュの主著『証明と論駁(Proofs and Refutations)』を基盤とし,とりわけラカトシュが定式化している「発見法的規則(Heuristic Rules)」に着目している。昨年度は,その発見法的規則を図式化して整理することを通じて,証明と論駁の活動を捉える枠組みを暫定的に構築した。本年度は,反例の場合に成り立つ推測を新たに生成する行為に焦点を当てて,その暫定枠組みを洗練することを目的とした。 ラカトシュは,反例の場合に成り立つ推測を生成する行為として,「演繹的推量による内容の増加」を挙げている。しかし,昨年度の分析では,この行為に当てはまらない生徒の活動も観察されており,枠組みを洗練する必要性が示唆されていた。そこで本年度では,次の二つの観点から生徒の活動を捉える枠組みを構築し直した。第一は,推測を生成する方法が演繹的か非演繹的かである。第二は,新たな推測が当初の推測と一般-特殊の関係にあるか,それとも場合分けの関係にあるかである。そして,中学校第二学年の授業を通じて,その枠組みが生徒の活動を捉えるために機能することを示した。一方で,その枠組みをさらに細分化する必要性も示唆された。 上述の研究活動と並行して,第1回日本数学教育学会春期研究大会(平成25年6月,筑波大学),ICMI Study 22: Task Design in Mathematics Education (平成25年7月,イギリス・オックスフォード),第37回日本科学教育学会年会(平成25年9月,三重大学),及び第46回日本数学教育学会秋期研究大会(平成25年11月,宇都宮大学)にて研究情報を収集するとともに,研究発表を通じて他の研究者と研究討議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,平成25年度に予備調査を実施し,暫定枠組みをその調査結果に基づいて実践的に検討する予定であった。いずれも本年度に達成することができたことから,研究目的の達成度は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,教師の協力の下,中学生を対象とした本調査を実施する予定である。そして,枠組みを実践的な側面からさらに洗練するとともに,洗練した枠組みの有効性を明らかにする。加えて,調査の分析結果をふまえて,学習指導への示唆を教材と指導法の観点から導出する。また,これらの研究活動と並行して,国際学会及び国内学会に参加し,研究成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は,予備調査の結果を先行研究の成果をふまえて分析する計画であり,そのために数学教育学の専門書籍を購読する予定であった。しかし,その点まで考察が進まなかったため,次年度使用額が発生した。 次年度に予定されている本調査では,数学教育学の研究成果をふまえて分析を行う予定である。その際,次年度に請求する研究費と合わせて,専門書籍を購読することを計画している。
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Research Products
(8 results)