2012 Fiscal Year Research-status Report
国語科教科書に内在する言語観に基づいた言語研究のための基盤的研究
Project/Area Number |
24730731
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
岩男 考哲 信州大学, 教育学部, 准教授 (30578274)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国語科 / 言語観 / 学習指導要領 / 日本語学 / 言語研究 |
Research Abstract |
(1)世間の言語意識調査 本研究を行うにあたり,「世間」が「国語」「日本語」というものをどう捉えているのかを確認する作業が欠かせないという考えに至った.当初の予定通り,単に教科書や学習指導要領内の言語観を確認するだけでも興味深い作業ではあるのだが,その教科書や学習指導要領に根ざす言語観に基づいた国語教育を受けた「世間」にどういった言語観が根ざしているのかを調査することも重要であると考えられるためである.そこで国立国語研究所が開発した『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(Balanced Corpus of Contemporary Written Japanese,略称 BCCWJ)を「世間」を代表するものとして位置づけ,その中で「国語」「日本語」といった語がどのように使用されているかを調査した.その結果,傾向として「国語」は「教科・科目」という意識が強く,「日本語」の方が言語としての意識が強いという結論が得られた. (2)日本語を母語とする学生の言語観 次のステップとして現在の大学生がどういった言語観を持っているか調査を行った.学生の言語観には「言語は道具である」といった言語観が見受けられた(ただし,この調査はまだ最終的なものではなく,現段階でのものであるため,今後この結論は変わることも考えられる).今後,国語科の提示する言語観の明確化,社会における言語観の実態の明確化,そして両者はどうあるべきか,それを指導にどういかすべきか等,考察を重ねていかねばならない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は国語科教材等をあたって,そこに内在する言語観のみを探る予定であった.しかし,その前に世間における言語観を探る必要性も感じるようになった.その調査に着手したために,計画に若干のずれが生じた次第である.しかし,その結果,国語科内の言語観と世間の言語観との比較が可能となるため,より研究の厚みが増したと考えられる. しかし,調査の過程において,国語教育分野の専門家や英語教育分野の専門家とのつながりを作ることができたため,必ずしも遅れたことがマイナスだとは言い切れないことも申し添えておく.
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Strategy for Future Research Activity |
既に行った世間の言語観についての考察は更に続けていかねばならない.更に,大学生の持つ言語観についての考察も行う(アンケートは収集済み).それらを踏まえて,本研究の主な目的である国語科に内在する言語観のあぶり出しを行い,それに基づき,国語科に資する言語研究とはどういうものか考察していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は概ね予定通りに研究費を使用することができたが,書籍の一部を予定よりも安価で購入することができたために,若干の残金が生じてしまった.そこで次年度はその残金も加えた研究費の執行を行う. 次年度の使用計画の内容としてはまず,国語科に内在する言語観を探るために国語科教材が必要となるため,それらの購入が挙げられる.また,二次資料として教材に言及した専門書の収集が必要になってくると思われる.こうした文献関係の収集が第一の使用目的として挙げられよう. また,他大学の教育学部教員にも調査協力を依頼済みであるため,それらの専門家との意見交換の場も設けなければならない.更には調査で得られた知見を学会等の公の場で発表する必要もあるため,そこへの旅費も必要となってくる.こうした移動費が第二の使用目的として挙げられる. そして,可能であれば教育現場の観察も行いたいと考えているので,そこでのデータ収集のための機材も必要になると思われる.これら第三の使用目的である. 次年度の研究費の使用計画は以上のようにまとめることができる.
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