2013 Fiscal Year Research-status Report
現代美術の教育における「抽象表現」指導の有効性と汎用化
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24730736
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
渡邉 美香 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (30549100)
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Keywords | 美術教育 / 抽象表現 / 現代美術 / 材料体験 / 材料分類表 |
Research Abstract |
本研究は、現代美術の一つであり、指導者にとって扱いにくいといわれる「抽象表現」の指導方法を構築することを目的としている。本年度は、小学校1,2年生(低学年)を対象に材料体験を促す材料分類表を作成した。小学校で実際に使われている材料100種類を取り上げ、材料の性質により道具の扱い方や造形活動の広がりに多様なヴァリエーションがあることを教師が理解し、授業づくりに生かせるよう、下記の3つの要素(モホリ=ナジの理論に基づく)から分類した。 ①構造…それ自体を成り立たせている不変のもの、紙の繊維や金属の結晶など ②テクスチャー…自然の持つ表面の表情、人の顔のしわ、表皮など ③表面相…外部的な要因によって、素材の表面に生じる変化 材料が、製品の部品のように選択されるのではなく、一つの素材がとらえ方によってさまざまな造形の可能性があることを促すべく項目立て、作表を行った。また、抽象表現初級コースにおける材料体験の課題と成果について、活動の広がりをまとめた。 これらの分類表を研究室のホームページで公開し、広く図画工作・美術の教育に携わる人が自由に見ることのできるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は学校教育現場で扱いやすい「抽象表現」の指導方法の構築を目的としており、①学校現場の実態調査をもとに、学校で準備可能な道具材料に応じた「抽象表現」の指導方法の検討②「抽象表現」の扱い方に関する理論の初級コースの内容に基づき、子どもの成長に応じた造形理解を深める指導方法モデルの作成と自己を再認識する表現教育の可能性についての検証③小学校、中学校でアート教育授業実践を行い、汎用性のある指導方法の検討・開発、を4年間に実施する計画である。学校教育での「抽象表現」指導方法を検討するうえで小学校低学年、中学年、高学年、中学校での指導内容についてそれぞれ1年間を当てて調査研究を行う方向で進め、2年目である本年度は小学校低学年を対象に材料分類表を作成し、研究室のホームページに掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、小学校高学年を対象とした「抽象表現」の指導内容・指導方法を検討する。高学年児童は、社会へ一歩踏み出す準備段階でもあり、自己を形作っていく上でより多様な他者を意識できる学びが期待される。世界の多様な文化の交流の中で、異質な価値観を包含したり、自己を超える他者理解の表現として誕生した背景を持つ「抽象表現」の特徴をもとに、造形表現の学びを作品メッセージの受信者を意識する行為へつなげる指導内容を検討する。自分たちとは異なる文化を持つ他者に想像力を働かせ、表現を深めることができるよう、海外教育機関との異文化交流授業実践事例等の調査から、抽象表現と人間関係の広がりとを関連づけて考える教材を検討する。 4年目は、中学生を対象に現場教師の助言を受けながら、指導内容・指導方法を検討し、教材開発を行う。さまざまな道具を使いこなすことができ、表現に対し挑戦する威容句を持てる中学生に対し、現代の多様なメディア表現への関心から、自分の感性を発揮できるようマルチメディア表現題材を検討する。ものを変容させ、感性に応じて意味ある造形に作り上げていく「抽象表現」の指導方法は、コンピュータをはじめとするマルチメディア表現においても、他の題材と大きく変わるものではない。造形の「動き」や「インタラクティヴ性(鑑賞者が動きを発動させること)」など総合的な表現指導のために、使用ソフト及び表現環境を吟味し、題材開発を行う。
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Research Products
(1 results)