2014 Fiscal Year Research-status Report
現代美術の教育における「抽象表現」指導の有効性と汎用化
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24730736
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
渡邉 美香 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (30549100)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 美術教育 / 抽象表現 / 現代美術 / 授業実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代美術の一つであり指導者にとって扱いにくいといわれる「抽象表現」の指導方法の構築を目的としている。これまでの小学校中学年を対象とした抽象絵画鑑賞活動の教材の検討、小学校低学年を対象とした造形材料分類表の作成に続き、本年度は、小学校高学年(5,6年生)を対象とした抽象表現題材の調査研究を行った。中学校や新たな社会へ一歩踏み出す準備段階であり自己を形作る上でより多様な他者を意識できる学びが期待される高学年の発達段階を考慮し、多様な他者=異なる文化背景を持つ海外の子どもたちとの学びに着想を得、アメリカ(ニューヨーク)の小学校とインド(デリー、グルガゴン)の小学校で授業実践を取材し、日本の小学校でも実践可能な事例を抽出した。特に、造形上の工夫に見られる制作者のコンセプトが理解される教材の開発を検討した。抽象表現題材カリキュラムをふまえ、来年度論文にまとめる計画である。 また、抽象表現題材について、水彩絵の具による表現、形、あるいは色からイメージを想像し膨らませる題材を大学生造形初級者を対象とした造形表現テキストとして執筆した。(発行は未定であるが近日発行予定) また、昨年度作成した小学校低学年対象の材料分類表を大阪府の小学校の授業研究会において実際に配布し紹介した。大阪府下の小学校での小中一貫教育図画工作・美術科カリキュラムの研究において、材料表を活用した授業づくりがなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は学校教育現場で扱いやすい「抽象表現」の指導方法の構築を目的としており、①学校現場の実態調査をもとに、学校で準備可能な道具材料に応じた「抽象表現」の指導方法の検討②「抽象表現」の扱い方に関する理論初級コースの内容に基づき、子どもの成長に応じた造形理解を深める指導方法モデルの作成と自己を再認識する表現教育の可能性についての検証③小学校、中学校でアート教育授業実践を行い、汎用性のある指導方法の検討・開発を4年間に実施する計画である。学校教育での「抽象表現」指導方法を検討するうえで小学校低学年、中学年、高学年、中学校での指導内容についてそれぞれ1年間を当てて調査研究を行う方向で進め、3年目である本年度は小学校高学年を対象に海外の教育機関で行われている抽象表現指導の題材を調査した。題材に関する検証について、附属学校、公立小学校の教師を交え検討する時間が持てなかったことから、来年度以降に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、中学生を対象に現場教師の助言を受けながら、「抽象表現」指導内容・指導方法を検討し、教材開発を行う。さまざまな道具を使いこなすことができ、表現に対し挑戦する意欲を持てる中学生に対し、現代の多様なメディア表現への関心から、自分の感性を発揮できるようマルチメディア表現題材を検討する。ものを変容させ、感性に応じて意味ある造形に作り上げていく「抽象表現」の指導方法は、コンピュータをはじめとするマルチメディア表現においても、他の題材と大きく変わるものではない。造形の「動き」や「インタラクティヴ性(鑑賞者が動きを発動させること)」など総合的な表現指導のために、使用ソフト及び表現環境を吟味し、題材開発を行う。
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