2012 Fiscal Year Research-status Report
重度・重複障害児の高次の造形活動を導く指導原理・方法の構築に関する研究
Project/Area Number |
24730738
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 吏志 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (80610922)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重度・重複障害児 / 造形活動 / 質的研究 / 特別支援教育 / 美術教育 / 海外動向調査 |
Research Abstract |
本年度はおおむね順調に研究を進めることができた。本研究の目的は、重度・重複障害児の造形活動において、児童生徒の高次の活動を実現するために、どのような指導原理、方法を用いればよいのかを明らかにすることである。そのため、本年度は、重度・重複障害児を対象とした造形活動で、教員はどのように児童生徒に関わり、どのような意図を持って造形活動を行っているのか、という内実を明らかにすることを目的とした。 研究方法は質的研究法を用い、H県内の特別支援学校2校を対象として、約半年間(不定期)の参与観察、および、東京、大阪、広島の教員4名へのインタビューを実施し、分析した。成果は理論的モデルとしてまとめ、2つの学会誌に投稿し、掲載された。本年度の研究の結果、造形活動における児童生徒と教員との関わりの内実、そして、実態把握、題材開発、評価の内実を明らかにすることができた。さらに、質的研究と同時進行で、当該トピックに関する文献調査を行った。詳細な調査によって、研究動向が明らかになった。 また、研究計画書に記載した米国での実情についても調査することができた。研究計画書に記載した学校の2校のうち、残念ながら1校のみの訪問となったが、授業参観、そして教員へのインタビューを行うことができ、米国の特別支援学校の実情を知ることができた。また、米国視察では全米美術教育学会(NAEA2013)にも参加し、主に特別支援に関連する発表を聞き、情報収集をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画の前半部分を計画通りに進めることができた。本年度の目的は、重度・重複障害児を対象とした造形活動がどのように行われ、実践を行う教員はどのように造形活動をとらえ、そしてどのように実践しているのか、という内実を明らかにすることであった。主に参与観察や教員へのインタビューを行い、質的研究法による分析によって、造形活動の構造を示すことができた。研究成果は2つの学会誌に投稿し、掲載となった。 同時に、学術的動向を調査するため、本研究トピックに関連する文献を詳細に調査した。1949年以降の学会誌、民間が発行する美術教育系雑誌3種の調査を行い、すべてのページを確認することで、より詳細な学術的動向を明らかにすることができた。 また、研究計画に記載した米国の特別支援学校の視察も実施することができ、授業参観、および教員へのインタビューを行い、米国での実情を調査できた。また、全米教育学会2013(NAEA)に参加し、美術教育における特別支援教育の在り方、位置づけを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(2年目)は、初年度に明らかになった成果を実証的に検証する段階となる。初年度には、質的研究によって、重度・重複障害児の造形活動に関する児童生徒と教員とのかかわり、そして実態把握、題材開発、評価の内実を理論的モデルとして示すことができた。しかしながらこの成果は実証することでより説得力を持つ理論となる。よって、本年度は前年度の成果に基づき、特別支援学校の重複学級において、重度・重複障害児を対象としたアクションリサーチを行う。アクションリサーチでは、成果に基づく様々な仮説を立て、教員と協働で研究を進める。 また、本年度は、昨年度米国視察で得た情報をまとめ、報告書として公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使途については、以下のとおりである。 ・アクションリサーチのための造形材料、ICT機器などの物品購入費。 ・学会や教育団体が主催する研究大会での研究成果の発表、および情報収集のための旅費。 ・論文執筆のための周辺機器(ソフト等)、用具(インク、用紙等)の購入、和訳や逐語録作成のための経費、学会誌掲載負担金などの経費。 ・海外の動向に関する継続的な調査に関する旅費等の経費。
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