2013 Fiscal Year Research-status Report
重度・重複障害児の高次の造形活動を導く指導原理・方法の構築に関する研究
Project/Area Number |
24730738
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 吏志 広島大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (80610922)
|
Keywords | 重度・重複障害児 / 造形活動 / 教科教育 / 美術科教育 / 特別支援教育 / アクションリサーチ / 質的研究 |
Research Abstract |
本年度も順調に研究を進めることができた。最も大きな成果は、昨年度公表した論文が今年度、「平成25年度美術科教育学会賞 奨励賞」を受賞したことである。(本年度の受賞者は、最高賞である美術科教育学会賞は該当者なしで、奨励賞の受賞者は私1名であった。)受賞対象となった論文は、特別支援学校に在籍する重度・重複障害児を対象とした造形活動における児童生徒と教員との関わりの内実をエスノメソドロジーによる質的研究によって明らかにし、指導原理・方法を明示した研究である。受賞理由として、「美術教育の理論と実践の発展に寄与する大きな可能性を持つものと認める」と評していただいた。 また、今年度公表した論文、報告書は2稿ある。一つは特別支援学校の重複学級で行われる造形活動におけるティームティーチングの内実を分析した研究であり、これは美術科教育学会の学会誌である『美術教育学第35号』に掲載された。また、報告書として、大学美術教育学会から依頼があり、『IRCN国際交流情報 第9号』に、昨年度訪問した米国ニューヨークの特別支援学校における造形活動の調査報告を行った。 また、進行中の研究として、今年度は前年度の研究成果をもとに、仮説を設定し、特別支援学校でアクションリサーチを行った。筆者自身が実践現場に入り、題材開発から授業運営までを行い、実践およびデータ収集を行っている。これについては、現在鋭意分析中である。 また、公表には至っていないが、当該研究を博士論文(論博)としてまとめ、平成25年3月に第1次審査を通過した。現在、内容の修正を行っており、今年度は完成に向けた仕上げを行う段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は研究計画のとおり進行している。ここまでの研究(2年間)で、前半部分の研究、つまり、先行研究の整理、特別支援学校でのエスノメソドロジーによる質的研究、海外実態調査による成果は、学会誌掲載論文3稿、紀要論文1稿、学会誌発行報告書1稿として公表できた。 また、学会誌掲載論文3稿のうちの1稿である、重度・重複障害児の造形活動における児童生徒と教員との関わりの内実を明示した論文は、平成25年度美術科教育学会奨励賞を受賞し、高い評価を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度(3年目)は科学研究費の申請期間の最終年にあたる。そのため、これまでの研究をまとめる段階となる。研究計画としては、確定している内容1点、そして計画が2点ある。 まず、確定している内容とは、平成26年7月にオーストラリア、メルボルンで開催されるInSEA World Congress 2014(4年に1度開催される国際美術教育学会) にて、研究発表(ポスター発表)を行う予定である。この発表には審査があり、平成26年3月に受理の報告を受けている。 また、研究計画として、1点目は、平成25年度に特別支援学校で実施した重度・重複障害児を対象としたアクションリサーチを論文としてまとめ、学会誌に投稿すること、そして2点目は当該トピックの博士論文を完成させることである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理由は大きく3点ある。まず1点目は、平成25年度に実施した特別支援学校でのアクションリサーチに関する経費が想定を下回ったことである。特に経費を要しなかったのが交通費で、勤務校の近隣の学校で実施させていただけることとなり、移動に関する経費がほぼ不要となった。 そして、2点目は計画最終年次に予定していたInSEA(国際美術教育学会)の経費が想定以上であったことである。平成25年9月に実施計画が発表された。参加費が高額であったこと、また、必要滞在期間も長かったため、今年度の支出を抑制した。 最後に3点目は、当初計画していなかった計画を翌年度新たに追加したためである。前回NAEA(全米美術教育学会)出席時に、特別支援教育と芸術教育の複合領域に関する学会が開催されているという情報を得た。平成26年度に参加を決めたため、今年度の支出を抑制した。 使用予定は以下のとおりである。 1)オーストラリア、メルボルンで開催されるInSEA(国際美術教育学会)でポスター発表を行う。そのための参加費および旅費に使用する。2)上記の学会で使用するポスターの制作費に使用する。3)発表内容の英文論文作成費に使用する。4)アメリカ、ワシントンDCで開催されるVSA(特別支援とアートに関する国際会議)に参加する。そのための参加費及び旅費に使用する。
|
Research Products
(3 results)