2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730743
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
長谷川 祐介 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (30469324)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 教科外教育(総合的学習、道徳、特別活動) / 部活動 / 生徒指導 |
Research Abstract |
本研究は、部活動の問題行動への理解を深化させるため新規に中学高校部活動経験者を対象にした調査を実施し、部活動において発生する問題行動に関する実証的な分析を行うことにある。平成24年度は、次の4点を行った。 第1は、先行研究の整理および検討である。国内の論文については、「CiNii」(論文情報ナビゲータ)の検索結果をもとに収集した。また国内の書籍や海外の文献も収集した。また日本教育社会学会に参加し本研究に関連する研究の情報収集を行った。これら整理していくなかで、先行研究における本研究の位置づけを明らかにした。 第2は、質問紙調査の再分析である。本研究代表者は、2003年に大学生を対象にした高校部活動に関する質問紙調査を実施していた。その調査データを分析した結果、本研究が焦点を当てている問題行動のうち、部員によるいじめや喫煙、飲酒は主に運動部を中心に発生していることが明らかとなった。また運動部においては指導者による体罰と部員同士のいじめや暴力に関連があることが明らかとなった。 第3は、インタビュー調査である。質問紙調査の再分析結果を踏まえて、部活動における問題行動は主に運動部を中心に実施されていることが判明したため、インタビュー調査の対象者は中学高校の時、運動部に所属した経験のある大学生(学部生、大学院生)とした。また指導者の意識や実態を把握するために、高校教員を対象にしたインタビュー調査も並行して実施した。調査の結果、部活動の問題行動のうち部員同士のいじめや暴力は部活動内の人間関係が原因として発生していることがインタビュー調査においても明らかにされた一方、喫煙や飲酒の原因は部活動以外にあることが示唆された。 以上の3点の内容を踏まえて、第4は新規質問紙調査の作成検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実績は当初の研究計画に従っておおむね順調に実施することができた。平成24年度は次の点の実施を計画していた。第1は質問紙調査の作成実査である。平成24年度は質問紙作成を行うため先行研究ならびに、既存の質問紙調査の整理検討を計画していた。なお既存の質問紙調査は本研究代表者がかつて実施したものも含む。第2はインタビュー調査である。部活動経験者ならびに部活動指導者を対象に調査実施することを計画していた。これらについてはおおむね計画通り、実施することができた。平成24年度の研究成果は研究論文としてまとめ、大分大学教育福祉科学部紀要に掲載予定である。 また本研究の社会的貢献を考慮して、質問紙調査の実査は平成25年度に計画変更した。その理由は、本研究の実施中に部活動における指導者の体罰問題が社会問題化したからである。そのことをうけ文部科学省は体罰に関する調査を実施することとなった。本研究において実施したインタビュー調査や質問紙調査の再分析の結果から、運動部においては部員同士のいじめや暴力は指導者の体罰と関連があることが示唆された。すなわち部活動における問題行動の発生要因の1つとして指導者の体罰が挙げられるのである。指導者の体罰問題が今日の大きな教育問題として関心が寄せられていることを受け、本研究で実施する質問紙調査において指導者の体罰問題を取り上げることは学術研究への貢献に留まらず社会貢献上、重要と判断した。 そこで平成24年度途中から体罰に関しても先行研究の検討ならびにインタビュー調査の実施を行い、それらを質問紙調査の作成に反映させた。その際、教育委員会が実施した体罰に関する調査項目も参考にした。このように質問紙調査の作成に時間を要したため、質問紙調査の実査は平成25年度に実施することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は次の3点の実施を計画している。 第1は、質問紙調査の実査ならびに調査分析である。本研究の質問紙調査は国立私立計10程度の大学に在籍する大学生を対象に、平成25年7月までに実査を計画している。質問紙調査のデータを用いて、次の2点について分析を行う予定である。第1は、部活動内における問題行動の発生と収束メカニズムについてである。問題行動別に部活動においてどのように発生するのか、もしくは収束するのか、その要因を明らかにする。またその際、指導者の行為、特に体罰がどのような影響を及ぼすのか明らかにしていく。第2は、学校生活と部活動の問題行動の関連である。部活動における問題行動と、学校における教師や生徒との関係など部活動以外の人間関係との関連について検討を行う。 第2は、インタビュー調査の実施ならびに分析である。平成24年度の調査を継続して平成25年度も実施をしていく。調査対象者は中学高校の時、運動部に所属した経験のある大学生(学部生、大学院生)に加え、中学高校教員を対象にした調査を実施する予定である。また部活動関連団体や教育委員会などに訪問し、問題行動の発生事例や発生状況の動向などについて調査を行う予定である。 第1と第2の成果をふまえて、第3は、研究成果の報告を行う。九州教育学会などで報告予定である。また本研究が対象とする体罰問題は国際的にも関心のある事象であることから、海外で開催される各種研究会、ワークショップなどでも報告予定である。その後、研究成果は論文化して公表する。論文は大分大学教育福祉科学部紀要や大分大学教育福祉科学部附属教育実践センター紀要に掲載予定である。その他、日本生徒指導学会など関連学会への投稿も予定している。 その他、研究の深化を図るため平成24年度に引き続き、先行研究の整理検討ならびに本研究に関連する学会や研究会などに参加し情報収集を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、平成25年度の研究計画内容に基づき使用していく。第1は、質問紙調査の実査ならびに調査分析に関する研究費である。データ入力作業を行うために、パソコンなどを購入予定である。また調査実施に関する作業ならびにデータ入力・整理作業の謝金が必要となる。大学のアルバイト代の実勢を考慮して謝金を支払う。また調査票の印刷費用、ならびに調査対象校(10大学程度)への郵送費を支払う。 第2は、インタビュー調査に関する研究費である。調査対象者へのインタビュー調査に関する国内旅費が必要となる。またインタビュー調査によって得られたデータの入力・整理の謝金が必要となる。質問紙調査同様、大学のアルバイト代の実勢を考慮して謝金を支払う。 第3は、研究成果の報告に関する研究費である。研究成果を目的とした学会・各種研究会参加を予定している。また情報収集を目的とした学会・各種研究会にも予定である。そのため日本生徒指導学会、九州教育学会、日本子ども社会学会、日本教育社会学会や海外で開催される各種研究会、ワークショップへの参加するための旅費が必要となる。 その他、本研究で入手した各種データや資料などを整理・保管するために文房具・OA用品を購入する。
|