2012 Fiscal Year Research-status Report
カナダ社会科における「社会的結束」を目指すシティズンシップ教育に関する研究
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24730745
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
坪田 益美 東北学院大学, 教養学部, 講師 (20616495)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カナダ / シティズンシップ教育 / 社会科教育 |
Research Abstract |
本年度は、文献調査ならびに現地調査において、情報収集を行うことを中心的な課題とした。特に、カナダの社会科におけるシティズンシップ教育が、今現在、公立の学校において、どのような環境で、どのようなことを目指して実施されているかということについて、オンタリオ州のトロントにおいて現地調査を行った。本調査では特に、分析対象とすべき学校ならびに教師の発掘を中心的なねらいとし、トロント大学教育研究所の教授ならびに学生らの協力を得て、公立小中高等学校計4校を見学させていただいた。その際、合わせてカリキュラムや教材等の資料を収集した。またトロント大学教育研究所において、同国の学校教育の動向や研究動向について社会科教育の専門家より講義を受けるとともに、本研究について意見やアドバイスを受けた。 加えて、シティズンシップ教育研究の国際学会であるcitizEDの国際研究大会に参加して、世界各国におけるシティズンシップ教育研究の動向について、情報収集を行った。 また、文献収集においては、カナダにおける「社会的結束」に関する文献をはじめ、その他の国々において「社会的結束」がどのように認識されているか、いかに近年注目を集めている概念であるかということを明らかにするために、古い文献から最新の文献まで、そしてさまざまな国家、文脈における「社会的結束」に関するより多くの文献を収集し、カナダにおける「社会的結束」の定義ならびにその活用のされ方について考察した。 以上の情報収集ならびに分析を通して、「社会的結束」を目指すカナダのシティズンシップ教育の動向について、理論と現状の双方から明らかにするための資料収集を行うとともに、その一部を論文にまとめて学術誌に投稿し、掲載された。また、日本国際理解教育学会のミニシンポジウムにて、登壇者としてカナダのシティズンシップ教育の動向と「社会的結束」の意義について発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、現地調査を行い、想定していた調査内容をおおむね遂行することができた。また、学会発表ならびに学術誌への論文掲載という形で、計画以上に成果発表については実施できている。さらに、申請者の予想通り、「社会的結束」は、近年国際的に重要な概念として注目度が上がっており、年々それらに関する文献が多数出版されている関係で、これまで以上に多くの理論的裏付けを得られてきている。 ただし、理論上は「社会的結束」についても、カナダのシティズンシップ教育についても研究が迅速に進んでいるものの、実際の授業の観察・分析については、一定期間観察する必要がある点から、時間的制約もあり、懸念が残る状況であり、順調に進んでいるとは言いがたい。また、カナダにおいても、「社会的結束」はまだアカデミックなレベルで重視されている傾向にとどまっており、実際の教育現場・授業の中で展開されているとは言いがたいということが本研究における調査活動の中で徐々に明らかになりつつある。よって、研究の目的や方法に若干の修正が必要であろうと考えられる点でも、計画はおおむね順調に進んではいるが、修正・検討すべき事態も生じているため、計画以上の進み具合とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、基本的にアカデミックなレベルと、政府の政策レベル、そして教育現場や授業という実際の状況の調査といった多方面から研究を進めていく。そして、その三者の齟齬や乖離、共通点や一致している点などについて明らかにすることで、それらの齟齬や乖離の原因についても追究していきたい。 また、日本とカナダの比較研究も一方で進めていきたい。多文化共生と社会統合という課題を抱えるカナダの取り組みは、今後益々グローバル化が進む中で、近い将来、日本社会が向き合わなければならないそれらの問題に取り組む上で示唆に富む。よって、現在の日本のシティズンシップ教育ならびに社会科教育と、カナダのそれらがどのように異なり、どのような点について学びを得ることができるか、さらには、カナダが先んじて直面している課題とそれへの対応策について、日本社会においていかに応用可能かといった点について検討することは、より汎用性の高い理論を構築する上で必要不可欠である。 以上、25年度は特に理論と政策と教育現場という三方の視点から立体的に、カナダのシティズンシップ教育について分析を進めるとともに、日本とカナダとの相違点や特異性、共通点などについて主に検討していくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、引き続き「社会的結束」「シティズンシップ教育」「カナダ」ならびに社会哲学等に関する各種文献の購入および、各種記録メディアやトナーなどの消耗品の購入に充てる。 旅費については、カナダでの現地調査を予定している。また、citizEDの国際学会への参加ならびに日本大会への海外の研究者の招聘等の費用とする予定である。
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