2013 Fiscal Year Research-status Report
カナダ社会科における「社会的結束」を目指すシティズンシップ教育に関する研究
Project/Area Number |
24730745
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
坪田 益美 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (20616495)
|
Keywords | シティズンシップ教育 / 社会的結束 / 多文化共生 / カナダ / 社会科カリキュラム |
Research Abstract |
本年度は、カナダ現地調査として、オンタリオ州教育研究所(OISE)を訪問し、同教授であるMark・Evans氏に面会し、カナダならびにオンタリオ州におけるシティズンシップ教育の最新動向についての聞き取り調査を行った。その中で、近年オンタリオ州が力を入れている包摂的な(インクルーシブ)教育・カリキュラム開発についての動向を詳しく説明いただき、その関連資料を収集した。この件については、多文化共生のためのシティズンシップ教育の一つの要素として、今後研究を深めていく予定である。また、同じく同教授であるReva・Joshee氏に面会し、社会的結束を目指すシティズンシップ教育に関する本研究について、意見・アドバイスを受けた。その中で、「社会的結束」の価値を再認識するとともに、アルバータ州の社会科カリキュラムの卓越性・先進性について、カナダの中でも高く評価されているとのことで、本研究の方向性の正しさ・重要度の高さについて再確認することができたと言える。 研究の中間発表としては、国際学会と国内学会の研究会において行った。まず、シティズンシップ教育の国際学会であるcitizEDの国際研究大会では、社会的結束に貢献するシティズンシップ教育の日本の事例として、仙台市泉区にある七北田小学校の「地域共生科」の実践を紹介した。国内学会としては、日本カナダ学会の研究会において、カナダの多文化主義と学校教育の関係、現状と課題について口頭発表した。その研究会において、他の発表者の発表においても、本研究で重視している「多様性の調整」という概念が重視されていたことから、本研究の価値が普遍的なものとして再確認できたと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画に基づいて、本研究は概ねその通りに進捗している。 ①OISEを中心に現地調査を行い、インタビュー等による資料収集を行い、分析を進めている。地域的特性と一般的共通性を明らかにする上で、ケベック州を分析対象とするかどうか再考している現状である。 ②まず、アルバータ州の情報収集はほぼ完了しており、25年度ははオンタリオ州についての情報収集に努めた。ケベック州については、少し着手したところである。 ③概要の中で述べた通り、カナダの研究者に直接本研究の主旨や内容について、積極的に意見聴取し、より研究の精度を高めるべく行動している。 ④研究成果の中間発表としては、国際学会と国内の学会の研究会においてそれぞれ一度ずつ口頭発表を行うとともに、国内の学会誌へ投稿し掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、これまで収集した情報ならびに資料の分析を進め、そして成果の発表を行うべく、一本の論文としてまとめる段階に入りたい。 他方、カナダだけではなく、日本や韓国、香港といった東アジアの国々・地域の新しい動向についても調査を始めていきたい。それらの比較検討を行う中で、多文化共生に向けたカナダのシティズンシップの特性、価値、意義について、より明確に提案することを目的とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一つには、予定していた海外出張が、他の資金によって支出されたことと、それ以上の出張は学内業務との関係で困難であったため。二つには、申請時には確定していなかった国際学会の研究大会の開催地が、日本となってしまったことで、予定していた出張経費よりも大幅に削減できたため。以上の理由により、次年度に繰り越しました。 本年度も、国際学会の研究大会へ参加するとともに、その旅程にノルウェーも追加して、ヨーロッパのシティズンシップ教育の動向について聞き取り調査を行う。 加えて、韓国国際理解教育学会の研究大会への参加を追加し、韓国の多文化共生ならびに、シティズンシップ教育への取り組みについて情報収集したい。
|