2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会における視覚伝達の構造を考慮した情報デザイン学習ツールキットの開発
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24730748
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上平 崇仁 専修大学, ネットワーク情報学部, 教授 (20339807)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 情報デザイン / 参加型デザイン / コミュニケーションデザイン / 共創 / デザイン教育 / 視覚伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はデンマークを拠点にして研究を行った。27年度の実績を以下の4点にまとめる。 1)作成したデザイン学習ツールキットの普及活動:過年度に制作した試作のうち、3点(タイプフェイス神経衰弱、PixC、サービススケッチツール)について、デンマークおよび英国でプレゼンテーションとヒアリング実施。またカードソーティングゲームは、指導者用解説マニュアルの作成を行った。企業の研修として日本各地でワークショップが行われ、利用者に実施状況についてヒアリングを行った。得られた知見を反映しつつ、ツールキットとしての統合にむけた検討を行った。 2)新規のツール開発:リビングラボゲームとダイアログゲーム、2点のプロトタイプの開発を行った。リビングラボは欧州で盛んな参加型デザインの実験環境であり、このツールはそれを構築していくことを検討している人々が自分たちで創造的に議論していくことを想定している。ダイアログゲームは社会的ジレンマの状況をカードゲームで行い、それぞれの考え方を対話しながら理解していくことを目的としている。両者のプロトタイプを作成し、テストの実施と研究者間で議論を行った。 3)画像共有システムのコンテンツとなる事例収集:過年度に構築したデザイン学習のための画像共有システムVisual Exchangeのコンテンツとして、欧州各地を訪問した際に各地でフィールドワークを行い、ビジュアルサインや街の中のデザイン事例などの事例を収集した。 4)ツールキットを用いた共創の可能性についての考察:主にヴィゴツキーやホルツマンなどの先行研究を参照して理論化の検討を行った。前年度に明らかになったコア概念(Playful / Empowerment / Cross boundary)を考慮しながら、道具によって文化差・専門性の差を乗り越えて共創を支援することについて欧州各地において研究者との議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度までに7点のツールを開発し、インターネット等を経由して日本各地で多くの人が利用するという実績を得た。また日本だけでなく、デンマークにおいてメーカーのデザイナーへいくつかのツールの提供を行ったことと、有用性や展開に関してディスカッションができたことは大きく評価できる。その一方で、成果物を配布するプラットフォームとしての公式ウェブサイト(英語の紹介含む)や各種マニュアルなどの整備は十分に行われていないことが前年度からの課題であった。1)26年度後半から在外研究の準備と実施に向けて多くの書類や手続きへの対処を要し、研究時間を捻出出来なかったこと、2)27年度は研究拠点がデンマークとなり、普段の研究室のような作業環境を構築することができず、デザイン環境が大きく制限されたこと。3)それに伴ってシステム開発補助やウェブサイト制作補助などの業務についてアルバイトへの委託ができなかったこと。4)普及活動・実践活動についても、日本国内に居ることができなったため制限されたこと、上記4点が主な理由となる。また多くの事前計画を変更することになった。しかしながら、欧州各国での研究者との議論や実地調査を重ねる中で、研究開始当初は想定することができなかった自分のビジョンにも変化が現れ、ヴィゴツキーやホルツマンなどの言説をツールの理論的背景にすることで、新しい可能性を見出すことができた。これらを掘り下げて研究を行い成果を公開するために、基金化して計画を一年延長とした。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、これまでの4ヶ年の試作と考察で得た知見を統合しつつ、大きく以下の4項目について研究を行う予定である。 1)前年度までに作成した7点に加えて、新しく作成した2点のプロトタイプ(リビングラボゲームとダイアログゲーム)を深化させ、テストとプロトタイピングを行う。また実利用できるツールとしてβバージョンを完成させ、ワークショップを行う。 2)ウェブサイトにおける公開と普及活動:制作したツール群をウェブサイトで一元化して公開し、普及に向けた活動を行う。また遠隔地の利用者がツールキットを利用できるように、専門家の協力を得て、指導者用マニュアルを整備する。 3)画像共有システムVisual Exchangeの開発と運用:すでに実装されている画像共有システムを運用し、欧州で収集してきた事例を投入し、データを増やす。さらにこのデータを用いて、実空間と情報空間を文脈的に接続して利用可能な最終成果物の構想と試作を行う。またインターネット上で試験運用を行う。 4)研究まとめの議論:4カ年行ってきた研究を振り返り、まとめとしての理論化を行う。異言語・異文化間において異なる知見を持ちより、さまざまなバリアを乗り越えて共創を行うために、「ツールキットを用いて」いかに目的を共有しコミュニケーションを活性化できるかについて検討を行う。これまでに試作したそれぞれのツールを用いて、人々が創造的な活動を行うことを支援するツールの役割、可能性、およびデザインアプローチの考え方について考察を行う。
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Causes of Carryover |
27年度はデンマークでの在外研究を行っており、システム開発補助やウェブサイト制作補助などの業務についてアルバイトへの委託ができなかった。これらのシステム開発やユーザインタフェース設計に未完成な部分があり、その分の人件費を計上していないため。また自身の研究環境についても制作が行える状況ではなかったため、材料等の消耗品を計上していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ツールキット開発におけるシステム開発・デザイン実装を部分的に専門家、アルバイトに委託するために人件費、謝金として使用する。また研究のまとめをおこなうために各種ワークショップやディスカッション時の消耗品費として利用する。
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Research Products
(2 results)