2013 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の文化的背景に基づいた多文化音楽教育カリキュラム開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
24730751
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
峯 恭子 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (90611187)
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Keywords | 多文化音楽教育 / 文化学習 |
Research Abstract |
本研究の目的は,わが国固有の文化的側面に即した多文化音楽教育のカリキュラムを構築することである。これまでに,多文化音楽教育を先進的に進めてきた米国を対象としてその歴史的背景を明らかにしてきたが,これに加えて米国の音楽教育が幼児期から体系的にカリキュラムが組まれていることに着目し,その構造および内容の分析・検討を行ってきた。その結果,以下のことが明らかとなった。 第1に,1960年代に実施された現代音楽プロジェクトの目的の1つでもある包括的音楽家性の育成といった枠組みのなかに,多文化的な観点が含まれるようになったこと。第2に、全米芸術教育標準および教科書・指導書が、一貫して行動指向の記述によってカリキュラムが考えられていること、また段階的なカリキュラム計画が提案されていること。第3に、全米芸術教育標準において音楽の活動に諸芸術や他教科、また歴史や文化と連携させた学習を行うことが推奨されていることが明白であること。また、この理念は音楽科教科書においても反映されており,多様な視点から音楽を分析し理解するために様々なカリキュラムモデルが提案されている点である。 以上より、米国における多文化音楽教育の歴史のなかで、“多文化”という概念が生じたとされる公民権運動の流れとは異なる教育改革において、その概念が包括されつつあったことが明らかになったことは特筆すべき点である。また、幼児期における多文化音楽教育において、幼児期から体系的に多文化の音楽を導入しその音楽の捉え方や分析方法を提示していることは、様々な音楽を理解・受容し音楽における多様性を理解させるという点において特徴的である。このことから、系統的なカリキュラムの構築および音楽的な学習内容の充実を図りつつ,さらに学習者の状況に応じて多様な音楽を取り入れていくことによって,多文化教育の目的達成の一翼をも担おうとしていると考えられる。
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