2012 Fiscal Year Research-status Report
発達性読み書き障害の特性理解と指導のための評価・指導パッケージの開発
Project/Area Number |
24730764
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
鈴木 恵太 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (50582475)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発達性読み書き障害 / 評価 / 指導 / 認知特性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、発達性読み書き障害を評価する教育評価法に関して評価と指導が直結した新たな評価・指導パッケージを開発することである。研究は主に「評価法の開発」および「指導法の開発」からなる。 「評価法の開発」に関しては、まず評価法の作成を行った。評価法は「読み」と「書き」から評価でき、文字情報処理における視覚認知(形態処理)、聴覚認知機能(音韻処理)、記憶機能(ワーキングメモリ)を評価できるよう作成された。その内容は、①視写課題:課題文を見て写す内容である。制限時間5分間の間の書字量・正確性を評価する。有意味文と無意味文の2試行から構成される。課題文は著作権が消滅した文学作品(物語)から引用された。②聴写課題:課題単語を聞いて写す内容である。書字量・正確性から評価される。有意味単語試行と無意味単語試行から構成される。課題単語は基本語データベース(天野・小林, 2008)から親密度6.0を基準に選定された。③読み取り課題:課題文を読んで覚えまとめる。④聞き取り課題:課題文を聞いて覚えまとめる、⑤音読課題:単語列を素早く音読する、という5課題構成である。 作成された評価法を高知県内4小学校1833名を対象に実施した(1年生:340名、2年生:326名、3年生:520名、4年生:225名、5年生:276名、6年生:146名)。さらに、この結果を基に学年毎の指標の標準的分布を算出しT scoreを指標化できるようにした。なお「指導補の開発」では、高知大学教育学部特別支援教育相談室に来室している発達性読み書き障害児6名(すべて男児で小2~小5)を対象に、評価法を含む種々のアセスメントを行って、つまずきと認知特性を評価し、特性に応じた個別指導法の開発を行った。また、上に述べた評価法(学級実施)から得られた特性に応じて、学級内でできる支援方略の開発を協力校と連携して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、発達性読み書き障害について、評価から指導を包括的に捉える評価・指導パッケージの開発を行うことである。研究は主に「評価法の開発」および「指導法の開発」から成る。今年度は特に「評価法の開発」を行い、①評価法の課題作成に続き、②高知県内4小学校(1833名)を対象とした課題実施を行って一般集団における成績分布を検討した。 評価法は、視写、聴写、読取り、聞取り、音読という5課題構成で、読み書きに関する認知特性について、大きく、視覚認知(形態処理)、聴覚認知(音韻処理)、記憶(ワーキングメモリ)の特性とバランスを評価できるようにした。実際の作成に当たっては「小学生の読み書きスクリーニング検査」(宇野ら, 2006)、「日本語書字スクリーニング検査」(河野, 2008)、「森田-愛媛式読み書き評価法」(愛媛LD研究会, 2005)を参考にした。評価においては、総書字数(視写、聴写)と正答数(読み取り、聞き取り)、音読スピード(音読)を取り上げ、その指標分布からT scoreを算出し、さらに正確性に関する指標(エラー数)では% tileを算出することとした。 成績分布の検討について、今年度は「書き」の弱さに着目した分析を行った。視写と聴写、読み取りと聞き取りという2課題ずつの組み合わせに注目し、これらのTを取り上げて、「アンバランス」について、差が10以上で、かつ一方のT が(1)40以下、(2)30以下という2つの基準を作った。加えてアンバランスはないが両課題とも(1)もしくは(2)の基準を満たす者を「低成績」として、それら出現率を算出した。その結果、基準(1)では4.8~14.5%、基準(2)では0.1~1.1%であった。先行研究を勘案し、カットオフポイントを2段階設定することで過誤を少なくし的確な支援に繋げることができるものと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本パッケージの標準化に向けた課題として以下の点が挙げられる。①評価法から得られたデータについて検討を行いスクリーニング精度の高さを確保すること。②評価法から示唆される特性に応じた指導法をまとめること。③評価法の手続きの簡略化を検討すること。④普及に向けた取り組みを行うこと。 ①については現在、得られた評価結果について各校に聞取り調査等を行うフォローアップ調査を行っている。また、高知大学教育学部特別支援教育相談室(相談室)に来室している読み書き障害児を対象として評価法を実施し標準集団との比較検討を行っている。加えて評価結果について、今年度は主に書字量を指標としたが、書字量以外にも正確性に関する指標も得られていることから、それらの分析も行い、より実態を反映できる指標の検討を行っている。 ②については現在、相談室に来室している読み書き障害児を対象として評価法を含めた種々のアセスメントからつまずきの状態と認知特性を評価し、特性に応じた指導法とその効果に関する実践的研究を進めている。さらに、KULASから示唆された特性に応じて、学級内でできる支援方略の開発を協力校と行っている。今後は引き続き検討を進め、特性に応じた指導/支援法をまとめていく。 ③について、教育現場で利用性の高い方法となるためには、スクリーニング精度の高さだけでなく、実施手続きの簡便さが求められる。作成された評価法は、全体で1時間程度を要する課題構成であり、さらに、分析する指標が書字量や正確性など多くの側面を取り上げたため、採点作業が煩雑で多くの時間を要した。この点は最も改善の必要があると考えられる。今後は①の分析と合わせて、より簡便性を高める課題構成を検討し、標準化に向けた検討を進める。なお④については標準化作業の目処が付いた時点から取り組みを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)