2013 Fiscal Year Research-status Report
発達性読み書き障害の特性理解と指導のための評価・指導パッケージの開発
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24730764
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
鈴木 恵太 高知大学, 人文社会科学系, 講師 (50582475)
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Keywords | 発達性読み書き障害 / 評価法 / 指導法 / 認知特性 / KULAS |
Research Abstract |
本研究は、発達性読み書き障害を評価する教育評価法に関して、評価と指導が直結した新たな評価・指導パッケージを開発することを目的としている(Kochi University Literacy Assessment Scales, KULAS)。本研究は主に「評価法の開発」および「指導法の開発」からなる。 「評価法の開発」に関しては、昨年度に作成された5課題(視写・聴写・読み取り・聞き取り・音読)から評価法を、4つの公立小中学校にて合計455名に実施し、評価法から示唆される読み書きの特性バランスと、特性に応じた指導法の支援を展開した。また、この一連の手続きを通して、スクリーニングツールとして学校現場での利用性の高さに関する検討を行った。 評価法の項目の検討では、聴写課題について、ほとんどの者が正解/不正解の項目が多く再構成の必要が考えられた。そこで、正答率を指標として、全体の結果への寄与率と項目全体のバランスを考慮しつつ項目の絞り込みを行い、全80問から36問構成とすることとした。 高知大学教育学部特別支援教育相談室(相談室)に来室している読み書き障害児8名を対象として、評価法を実施し他のアセスメント結果標準集団との比較を行った。その結果、評価法から示唆される特性について、WSICやDN-CASなどのアセスメント結果と概ね一致する傾向があることが示唆され、本評価法にて、読み書きとその背景となる認知的特性バランスをスクリーニングできていることが考えられた。 「指導法の開発」では、相談室に来室している読み書き障害児を対象として、認知特性に応じた個別指導および集団指導場面での方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、発達性読み書き障害について、評価から指導を包括的に捉える評価・指導パッケージの開発を行うことである(Kochi University Literacy Assessment Scales, KULASと称す)。研究は主に「評価法の開発」および「指導法の開発」から成る。研究の進捗状況は概ね計画通りに進展している。 「評価法の開発」では、作成された5課題(視写・聴写・読み取り・聞き取り・音読)を高知県内4つの小中学校にて455名を対象に実施した。得られた結果から、読み書きに関わる特性バランスを評価し、バランス/アンバランスに応じた指導法の支援を展開した。 評価法の結果を分析し評価項目の再検討を行い、聴写課題の項目の再構成を行った。分析対象者は1859名であった。聴写課題は、有意味単語・無意味単語からなり、各々2文字、4文字、6文字、8文字単語(各10単語)の合計80単語から構成されている。結果を分析すると単語により正答率に大きな偏りがある項目がみられたため、項目の絞り込み作業を行った。正答率を指標として、正答率の極端に低い項目を削除するとともに、合計得点を目標変数としたロジスティック回帰分析を行った。これら検討により36項目に項目を絞った。 高知大学教育学部特別支援教育相談室に来室している読み書き障害児8名を対象に評価法を実施し、標準集団との比較を行うとともに、他のアセスメント結果と比較検討した。その結果、設定されたカットオフポイント(COP<40およびCOP<30)を下回る者が7/8名であり、設定されたアンバランスの基準(課題間の差異>|10|)を上回る者が6/8名であった。WISCやDN-CASなど他のアセスメント結果と比較したところ、概ね同様の傾向を検出することが示された。以上から、本評価法がスクリーニングツールとして一定の妥当性を有することが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、発達性読み書き障害について、教育現場で利用性の高い評価法と指導法が直結した新たな評価・指導パッケージを開発することを目的としている。今後、本パッケージの標準化に向けた課題として以下の点が挙げられる。①評価法の簡便性を確保すること、②特性に応じた指導法を検討すること、③配布版を作成し県内小学校に配布するとともに広報活動を行うことである。①については、実施内容の簡便性の検討として聴写課題のブラッシュアップを行い実施時間の短縮を図った。今後は採点作業と結果計算の簡便性を検討する必要がある。現在は、実施を学校に依頼し、結果の採点と分析作業は大学で行っているが、最終的には、現場の教員が全てを簡便に実施できなければ普及は難しいと思われる。そこで、採点項目のブラッシュアップを図るとともに、素点入力から分析結果表示までのプログラムを開発する必要が考えられる。②については、現在、相談室に来室している読み書き障害児を対象として評価法を含めた種々のアセスメントからつまずきの状態と認知特性を評価し、特性に応じた指導法とその効果に関する実践的研究を進めている。さらに、KULASから示唆された特性に応じて、学級内でできる支援方略の開発を協力校と行っている。今後は引き続き検討を進め、特性に応じた指導/支援法をまとめていく。③については、高知県内の学校から利用の問い合わせも多いことから早急に利用可能になるようHPや配布版を作成していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度計画を進める中で、「採点と結果表現の簡易化」の必要性が出てきた。この解決としてプログラム上に素点を入力すると結果表現が出力されるようなプログラムの開発が考えられたため、その開発費用は当初計画に計上していなかったことから、その予算の確保として年度途中で支出を抑えた。 また、計画を進める中で、県内の小中学校(および各教員)から利用の問い合わせを多く受けた。そこで、当初の計画よりも広くHPおよびCD-ROM版として配布の必要性が出てきた。 以下の作業のために支出する予定である。 ①評価法の結果出力に関して、素点入力から結果表現までをプログラム上で簡便に行えるようなプログラムの作成。②KULASを一般公開するためにホームページの立ち上げ。③CD-ROM版を作成し各学校に配布
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Research Products
(6 results)