2012 Fiscal Year Research-status Report
発達段階と障害特性に応じたセルフ・アドボカシー・スキル教育の実証的研究
Project/Area Number |
24730765
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
片岡 美華 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (60452926)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 自己権利擁護 / 障害の自己理解 / 教育的支援 / 思春期 / 青年期 / 特別支援学校 / 障害特性 |
Research Abstract |
H24年度は本研究の初年度に当たるため、これまで検討してきたセルフ・アドボカシー・スキル(SAS)教育プログラムの吟味と実施のための調整を前半に行った(ステージ1)。具体的には、個別指導で行ってきた方法について研究者や、教員、実践者(大学院生含む)とともに議論を行い、プログラム教材の修正を行った。この修正版を用いて、新たに体制を組み直し、大学においての個別療育活動を予定よりも早く夏休みから開始できた。また、記録内容を整理して、障害の自己理解と行動や言動に焦点化することとし、定期的にカンファレンスを開いて対応してきた。さらに、対象生徒が在籍する学校の教員とも情報交換会を数回にわたって行い、学校とも密に連携を行った(ステージ2)。 一方、ステージ2は、小集団での実践も想定しており、この点については、対象校の教員と協議しながら、「自己を見つめる」という視点での授業に関与した。ただし、生徒の発達段階と障害特性の実態把握も必要であったために、申請者主導のプログラム実施ではなく、まずは対象校の教員が中心となって、そこに申請者の仮説を反映するという形をとった。実態把握については、申請者が直接対象校に赴いて、検査等により分析を行った。本研究は、発達的観点が重要となるため、こうした検査を行った上での教育実践は大変重要であり、また、生活実態をよく知る教員との協議が、プログラムを適切なものとするには不可欠であったと考える。これらの実践は、H25年度の学会で報告予定である。 海外等における先行事例については、ナンヤン大学教員とメール協議したこと、国際LD学会において豪州、米国等の研究者と情報交換できたこと、スロベニアに赴いて、具体的な実践について討議できたことが成果として挙げられる。また、小島氏(岐阜大学)や、田中氏(東北大学)等の研究者から専門的知識を得られたことも今後の研究に大いに役立った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の目的がステージ1とステージ2の実施であり、これらがおおむね達成できたことから、この自己評価に至った。具体的根拠としては、ステージ1のセルフ・アドボカシー・スキル教育プログラムの吟味と調整について、これまでの実践にかかわった者(教員、大学院生含む)との間での協議が進んだこと、国内の専門家から知識や示唆を得ることができたこと、国際LD学会を中心に、海外の研究者と情報交換ができたことがあげられる。とりわけ、スロベニアに実際に赴き、カウンセリングセンターでの実践の様子を学べたことも成果の一つとなった。 ステージ2については、大学における個別療育活動が順調に進んでおり、実施体制や記録の内容なども充実させることができたことが根拠としてあげられる。また、対象者の変容も見られ始めている。特別支援学校での小集団での実践については、計画よりもやや消極的な実践しかできず、実態把握と指導への部分的関与(定期的な授業参観、カンファレンス、内容についての助言)にとどまり、教育内容の提示や年間指導計画への反映などの積極的な関与には至らなかったことが課題として残った。 全体としては、少しずつデータが集まりつつあること、学校との連携が順調であること、対象者の変容が感じられることなど、着実に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度は、ステージ3とステージ4を中心に研究を行う。具体的には、ステージ3として、H25年度中の学会発表や論文報告を念頭に、執筆(準備含む)を行う中で、H24年度の内容の再検討やプログラムの修正など今後の実践に向けての検討を行う。また、文献等によって新たな知見を加えて発展させていく。ステージ4では、引き続き個別療育活動を実施し、障害の自己理解についての教育実践を深めていく。そしてH25年度後半からは、小集団での教育プログラムを実施する予定であることから、改めてグループ編成や、教育内容について対象校の教員と協議を行う。特に、教育内容、指導計画への反映については、H24年度の課題として残ったことから、この点について早期から教員と検討を行ったりして、積極的に関与していきたいと考える。さらに、定期的に学生らを対象校に派遣することで授業観察記録をとったり、対象生徒の様子を詳細に把握したり、教育活動の修正を含む微調整を行っていきたいと考える。 これらのプログラムの点検については、夏の国際学会での研究討議や、国内の学会での発表、そして国内外の研究者とのメール等による情報交換によって行い、適宜指導助言をいただくことを考えている。学会等についてはすでに内容の討議も始まっており、実施に向けて稼働し始めているところである。今年度の後半には、国内外の研究者より、改めて示唆を得る予定で進めている。 上記のH25年度の実施計画を達成することで、H26年度の最終年度でのセルフアドボカシースキル教育プログラムの分析評価、提案につなげていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(4 results)