2013 Fiscal Year Research-status Report
発達段階と障害特性に応じたセルフ・アドボカシー・スキル教育の実証的研究
Project/Area Number |
24730765
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
片岡 美華 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (60452926)
|
Keywords | 発達障害 / 自己権利擁護 / 障害の自己理解 / 教育的支援 / ナラティブアプローチ / 思春期 / 青年期 / 自立 |
Research Abstract |
H25年度は、研究計画のステージ3(S3)とステージ4(S4)に該当する。 S3では、実践結果に関して対象者や関係者から聞き取り調査することで、本プログラムの中間評価を行った。具体的には、夏から秋にかけて、対象者へのインタビューや、関係者や研究者に対して意見を求めるなどした。結果、有効とされたのは、対象者との会話を中心に据える手法や、ワークシートを重視しつつもあくまでもひとつのツールとして用いるということなどであった。前者は、ナラティブアプローチとして知られる方法であり、本研究においてその有効性が認められたことから、現在、成果について報告をまとめているところである。 S4は、継続的に実践を行っていくことが中心となる。そこで、本年度も定期的に活動を行った。特に本年度は、会話を可視化するという新たな手法を取り入れ、プログラム後のカンファレンスにおいても深く議論を重ねた。このことから対象者の変化が見られ、この変容については、H26年度の学会等で発表予定である。集団プログラムについては、学校での取り組みをビデオ録画したり、対象者にインタビューを行うなどしてデータ収集を行った。しかしこの集団プログラムは、あくまでも学校主体のものであり、対象校の教員による実践である。したがって、本研究の仮説を実証するには、より綿密な計画を立てた上での連携を通した実践が不可欠であり、この点は課題として残っている。 研究上の意見交換や指導助言等については、国際学会や大学訪問でオーストラリアの研究者やナンヤン大学の教員と直接話ができたこと、イギリスの事例を知り実践へのヒントを得られたことなどがある。またスロベニアからカブクラー准教授を招へいし支援の在り方について学ぶ機会を得た。なお岐阜大学の小島氏や奈良教育大学の玉村氏からは、継続的に意見をいただいており、小島氏とは、本研究成果を含めて書籍を出版予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度の目的がステージ3とステージ4の実施であり、これらがおおむね達成できたことから、この自己評価に至った。具体的根拠としては、ステージ3について、プログラムに関しての聞き取りを行えたことがあり、そのデータの一部は7月開催の学会で発表することがすでに採択決定されている。 ステージ4については、個別療育活動を順調に進められ、一定の変容が見られたこと、活動において有効であるという手法(ナラティブアプローチや会話の可視化)が見いだせたことなどが積極的評価の根拠である。またプログラム後の事例検討が継続的に行えたこともデータ蓄積という点で重要な成果であった。集団での実践については、授業の録画、対象者へのインタビュー、カンファレンス、内容への助言と、前年度よりも関与できた。とりわけ学会での自主シンポジウムを通して、対象校で行われている取り組みについて意見を交わすことができたのは大きな成果であった。しかし、年間指導計画やグルーピングなどへの積極的な関与ができず、この点が課題として残ったままである。 以上のことから全体としておおむね計画通りに進んでいると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、ステージ5とステージ6を中心に研究を行う。 ステージ5は、継続的な実践である。個別療育活動はH25年度で一旦終了(卒業)となったが、卒業生に対しての聞き取り調査を行うことで、本研究で中心としているセルフアドボカシースキル(自己権利擁護力)が定着しているか否かの検討を行う。また、小集団活動については、さらに対象校の教員と連携し、発達段階と障害特性という本研究のテーマや仮説に対して一定の回答が得られるよう努める。特にこの小集団活動に対しては、H25年度の課題ともなっていることから、解決に向けて善処する。なお、ステージ5については、当初の予定では前期(8月まで)を研究対象とすることとしていたが、これまでの実践をみる中で、生徒の変容が大きくみられるのが、就職や進級と関わる2学期後半から3学期であったことから、研究時期を拡張して継続的にデータ収集を行いたいと考える。 ステージ6については、プログラム分析とまとめ、公表である。プログラム分析については、対象者やスタッフから聞き取り調査を行うことで、プログラムにおいて不可欠な内容や手法について確認し、分析を行う。これらをもとに、国内外の研究者より評価や助言をもらいプログラムの完成に近づける。さらに、これまでの個別療育活動で見られた変容や、そこで見いだされた有効な手法について国内を中心に学会発表を行う。また、7月に開催される国際LD学会に行き、海外の研究者と意見を交わすとともに、ステージ3の結果(自己権利擁護力の活用やプログラムについて)を報告する予定である。他に、ステージ5とも関連するが、現場の教員と密にやり取りをする中で、学校でできる教育支援プログラムの在り方についても検討を図りたいと考えている。
|
Research Products
(7 results)